おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

王様のためのホログラム

日差し眩しい晴天の一日。
根詰まりで葉が一部黄ばんできたローズマリーの植え替えをした。
最寄りのホームセンターでは10号までのスリット鉢しか置いていない。
来年はこれ以上の鉢増しは出来なさそうだ。
ジョイフル本田とかいう、超でかいパラダイスのようなホームセンターがある地域がうらやましい。

映画「王様のためのホログラム」を観た。

砂漠の上空を行く航空機。
座席でハッと悪夢から目覚めた米国人の中年男がいる。
おや?
乗客は白い装束に身を包んだ聖地巡礼ムスリムばかり。
礼拝の時刻なのか、彼らは一斉に祈りを捧げている。
それはまるで、この不運な中年男のために捧げる祈りのようでもある。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

彼が降り立ったのはサウジアラビア王国
多くの外国人が出稼ぎに来ている、オイルマネーで潤う豊かな国だ。

彼は、米IT企業のセールスマン。
国王の甥と面識がある彼は、この仕事のために雇われた。
2025年の完成を目指し、砂漠のど真ん中に150万人都市を建造するという国王の巨大プロジェクトの一環として、最先端都市に相応しい3Dホログラム技術を駆使したテレビ会議システムを売り込もうという算段だ。

実のところ、国王の甥なんて遠い昔に一度会っただけ。
それよりも国王に直接売り込んだほうが早い。
造成中の砂漠に急ごしらえで造られた大きなテントが彼の仕事場だが、電話回線もWi-Fi設備もねえ。
これでどうやってプレゼンするんや?
っていうか、国王はいつここへやってくるんや?

国王との連絡役の担当者もなかなか捕まらず、誰に聞いても分からない。
時間にルーズで、約束なんてまるで意味を成さない。
全てにおいてどこかいい加減。
いったい何なんやこの国は?
結果を急ぐ本国の上司からはせっつかれ、彼は時差ボケとプレッシャーでグッタリだ。

それでもこの商談をなんとしてもまとめねばならない。
彼には、ある深刻な事情があった。

前職で彼は製造拠点を海外に移し、地元の雇用をごっそり奪ってしまうという苦い経験があった。
しかも、この会社を救うための決断が裏目に出て、結局は仕事を海外に奪われ事業そのものが立ち行かなくなってしまう。
会社を追われ、家庭は崩壊。
娘の大学費用すら用立てられなくなってしまい、多くの人々を不幸に巻き込んでしまった。

無職の自分が今の会社に拾われたのは、王族とのコネクションという有って無いような価値。
それが今の、自分のすべてだ。
ここで結果を出せなければ、自分の存在価値は消え失せてしまう。
さあ、この罪深き不運男の彼に、中東の地は奇跡を与えてくれるだろうか。

物語は、罪の意識に苛まれつつ、砂漠の国で起死回生を図ろうと奔走する中年男の姿を描くヒューマンドラマ。

羊の群れに迷い込んだ一匹の狼に、彼は自分の姿を重ねたのだろうか。

近代的な都市と遊牧民の暮らしが混在する砂漠の国の風景が圧巻。
我々の常識を超えるムスリム社会の特殊性が見どころ。

この世に無駄というものはない。
時には寄り道したっていいじゃないか。
そこで得た体験や人の縁こそ人生の宝だよと、時間に追われ、つい合理性ばかり追求しがちな我々にふと気づきを与えてくれる。

このところ不運続きだと思っているあなたは、彼のように何かに囚われているだけなのかも。
人生に行き詰った中高年のための一作。

ブリッジ・オブ・スパイ」のトム・ハンクス
アレクサンダー・ブラック
インフェルノ」のシセ・バベット・クヌッセン
レディ・イン・ザ・ウォーター」のサリタ・チョウドリー
トレイシー・フェアラウェイ
ホワイトアウト」のトム・スケリット
デヴィッド・メンキン
クリスティ・メイヤー
メーガン・マツコ
アミーラ・エル・サイード
ハリド・レイス共演。

原題「A HOLOGRAM FOR THE KING」
2016年 制作。