おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

宮廷料理人ヴァテール

すっきりしない曇り空が続く。
気温が上がらず冬の空気に近くなってきた。
ひざ掛けだけではちょっと心もとない。
そろそろコタツの出番か。

映画「宮廷料理人ヴァテール」を観た。

コンデ大公殿へ。
国王陛下は貴公の招待を受けシャンティイ城を訪問される。
滞在は3日間。
陛下の希望はごく素朴で牧歌的なもてなしだが、陛下のご寵愛を得たくば贅の限りを尽くした大饗宴でもいいんやで。
ついては陛下の名代たるわたしが事前に確認しに行くので、よろしくたのんますわ。
そんなローザン侯の一方的な書簡から物語は幕を開ける。

時は1671年。
シンメトリーな庭園が広がるここはコンデ大公の居城。
国王ルイ14世が、王妃や愛人、女官に側近をぞろぞろ引き連れてやってくるというので城はにわかに慌しくなった。

先の内乱においてブルボン家に反旗を翻したコンデ大公は、もう長いこと冷や飯を食わされている。
この期に及んでなぜ国王がやってくるのか。
大公自身も国王の腹の内を図りかねている。
しかしながら、再びフランスの国政に返り咲けるチャンスには違いない。
莫大な借金をしてでも国王をもてなさねば。

この失敗の許されない饗宴の総合プロデュースを手がけることになったのが、大公に仕える料理人ヴァテール。
芸術家肌の職人である彼は、寝る間を惜しんで豪華絢爛な演出プランを練り上げた。

キャッキャとはしゃぐ客人たちはのん気なものだが、裏方は大変だ。
彼はひとり仕事に忙殺され、こま鼠のように城内を駆け回る。

さて、そんな彼を見つめる王妃付きの女官がいた。
宮廷内の狂乱をどこか冷ややかに眺める彼女は、権力におもねることなく最高の物を作り出そうとする彼の職人魂に惹かれたのかもしれない。
彼女は、国王がなぜここにやってきたのかそれとなく告げ、その気まぐれに人生を振り回されてきた彼に同情する。

雇い主をはじめ、もっぱら貴族たちは彼のような縁の下の力持ちになど無関心だ。
どんなに心尽くしてもまず報われることはない。
彼女のささやかな親切は、彼にとって理解者を得たような喜びだった。

とはいえ失敗が許されない事態に変わりはない。
饗宴を成功させねば借金も返せないのだ。
しかも、天候や思わぬトラブル、そして才能を持たざるものの嫉妬が彼の行く手を阻む。

果てさて、波乱の大饗宴の行方はいかに。

物語は、17世紀のシャンティ城を舞台に、国王を招いての饗宴で繰り広げられる人間模様を描いたヒューマンドラマ。

表向きの豪華絢爛さとは裏腹に、虚しい政治的駆け引きや処世術に明け暮れる貴族たち。
そして、そんな貴族に振り回される一般庶民。
気まぐれな太陽を中心に回る社会。
それでも人々は生きるため、この権力の輪から逃れることは出来ない。

労働者が使い捨てられてゆく現代社会とどこか重なって見える。
時代を経て社会や政治のシステムが変わっても、人の本質が変わらないせいだろうか。
主人公は保身に走る経営者に代わって世間の矢面に立たされる中間管理職そのものだ。
男の苦悩が滲む、なんともやるせない一作。

しあわせの雨傘」のジェラール・ドパルデュー
「或る終焉」のティム・ロス
ゲーム・オブ・スローンズ」のジュリアン・グローヴァー
アリエル・ドンバール
「アップサイドダウン 重力の恋人」のティモシー・スポール
眺めのいい部屋」のジュリアン・サンズ
マーレイ・ラクラン・ヤング、
ナタリー・セルダ、
「二ツ星の料理人」のユマ・サーマン
マリーヌ・デテルム、
エミリー・オハナ共演。

原題「VATEL」
2000年 フランス、イギリス制作。