おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ジェーン・ドウの解剖

天気は下り坂で昼過ぎから雨になった。
暑さが落ち着き、一週間前とはまるで異なる爽やかな空気に包まれている。
庭仕事が苦にならなくなってきたので、根詰まりして下葉が黄色くなってきたオレンジの植え替えに精を出す。

映画「ジェーン・ドウの解剖」を観た。

ここバージニア州の田舎町で事件は起こった。
閑静な屋敷で一家3人の惨たらしい遺体が発見されたのだ。
外部から何者かが侵入した形跡はなく、遺体はいずれも家の外へ逃れようとしていたように見受けられるという。

それだけではない。
屋敷の地下からは、半ば土に埋もれた若い女の全裸遺体が発見された。
なんと面妖な。
一体この家で何があったというのだろう。
現場に駆けつけた保安官にも見当が付かない。
この物語の行く末を暗示するかのような、不気味で謎めいたそんな前置きから幕を開ける。

さて、この町で三代にわたり遺体安置所を営む親父と息子がいる。
親父はベテランの検死官。
まだ若い息子はその助手だ。
自宅の地下に設けられた施設で、遺体の司法解剖から安置、火葬までを一手に引き受けている。

その親子のもとへ、ジェーン・ドウと仮の名が付けられた身元不明のホトケさんが担ぎ込まれた。
冒頭の若い女の遺体である。
保安官いわく、明日の記者会見までに検死を済ませてもらいたいとの事だった。
今夜は徹夜になりそうだ。

保安官の口は重く、事件現場がどんな状況だったのか詳しい情報はほとんどもらえない。
しかし、遺体には必ず事件の真実が隠されている。
遺体が全てを語るのだ。
さっそく検死台の上に遺体は横たえられ、親父と息子はいつものように粛々と仕事に徹するのだった。

外傷らしきものが認められない一見して綺麗な遺体だ。
しかし、ほどなく二人は異変に気づく。

女の腰部が異様に細いではないか。
まるで長年コルセットをしていたかのよう。
でも、この現代にコルセットはありえねえ。
うーん、何やろねえ。

ギョギョギョッ!
口を開いてびっくり。
舌が切り取られている上に、両手首と両足首の骨が折られているではないか。
これは何を意味するのだろう。

いよいよ遺体にメスが入る。
二人は息をのんだ。
死後経過しているはずなのに、つい今しがたまで生きていたかのように滔々と流れ出る血液。
こんなホトケさんは初めてや。

ラジオのニュースが嵐の接近を告げている。
解剖が進むにつれ、それだけには留まらぬ説明の付かない事実が次々と明らかになってゆく。
すると同時に、地下の施設全体に、さながら異界に紛れ込んだかのような空気が漂い始めるのだった。

この女は一体何者なのか。
真実を求め開けてはいけない蓋をこじ開けてしまった、検死官の親父と息子の顛末はいかに。

物語は、身元不明のホトケさんジェーン・ドウの正体を詳らかにしてゆくオカルトホラー。

悪魔が怖いのか。
いやいや本当に怖いのは人間ではないのか。
米国の黒い歴史に端を発した恐怖を描く。
人間の仕業とは思えないあまりに残酷な仕打ちに震える。

真実は知らない方がいいこともあるようだ。
ブライアン・コックスの演技が光る、夏の夜に相応しい背筋凍る一作。

「ロブ・ロイ ロマンに生きた男」のブライアン・コックス
ローン・サバイバー」のエミール・ハーシュ
オルウェン・ケリー
ゲーム・オブ・スローンズ」のマイケル・マケルハットン
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のオフィリア・ラヴィボンド共演。

原題「THE AUTOPSY OF JANE DOE」
2016年 制作。
R-15+