おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ヒトラー暗殺、13分の誤算

日差し暖かな晴天の一日。
冬眠していたカランコエ
三ヶ月遅れでようやく開花した。

映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」を観た。

暗がりの中、ライトを口にくわえ
レンガ壁の奥の穴に
せっせとダイナマイトを詰める青年。
血の滲むその手は震えている。
手製の時限装置を慎重にはめて蓋をすると
その場を後にした。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

時は1938年11月8日。
ミュンヘンの酒場のホールで
ヒトラー総統の演説会が行われていた。
熱弁の最中、総統は「霧により飛行不可」の
メモを受け取る。
移動のため、早めに演説を
切り上げねばならなくなったようだ。

それが幸いした。

総統が酒場を後にしてから13分後、
冒頭の時限装置が爆発。
7名ほどがテロの犠牲者になったという。

時を同じくして、スイスと国境を接する
ボーデン湖畔の町コンスタンツで、
挙動不審な男が国境警備のドイツ兵に捕まった。
冒頭の青年である。

時限装置を設置した酒場の詳細な見取り図を携え、
赤色戦線戦士同盟のバッジをつけた彼の名は
ヨハン・ゲオルク・エルザー。

総統暗殺未遂事件の下手人が捕らえられたとあって、
さっそくゲシュタポによる容赦ない尋問が始まった。

生粋のドイツ人である彼が、
なぜ同胞を狙うようなテロを行ったのか。
最高指導部もその真相を知りたい。

本人は頑なに単独犯を主張するが、
組織的犯行に違いないと睨んだ
最高指導部と捜査当局によって
親族や関係者はことごとく捕らえられ、
彼には激しい拷問が加えられる。

さあ、言え!黒幕は誰だッ!?
アカか?
それとも他国の手引きかッ?

なぜ青年はテロリストになったのだろう。
物語は、ドイツの歴史に葬られた反体制の闘士
ヨハン・ゲオルク・エルザーの真実に迫る
サスペンス。

恐ろしい拷問と時間軸を前後させながら、
音楽と自由を愛するチャラ男で
手先の器用な技師でもあった彼が、
テロリストへと変貌してゆく過程を描く。

感性豊かな彼は、世の流れに違和感を覚える。
きっと豊かになると信じ
みな諸手を挙げてナチスを支持しているが、
自由はなくなり労働者の生活も厳しいままだ。
むしろ時給は下がり酷くなってるじゃないか。
このまま戦争に突入すれば確実にドイツは終わる。
かくして国の崩壊をいち早く予見し、
現実が見えなくなっている国民に
警鐘を鳴らそうとした彼の生き様を垣間見る。

ナチスに期待を寄せるドイツ国民の姿が、
危なっかしい好景気に踊る我が国の現状と
どこか重なって見えた。

テロリストの動機に迫るのが本作品のメインテーマだ。
まるで暗殺計画そのものがメインと誤解を与えるような
この邦題はふさわしくないように思う。

白いリボン」のクリスティアン・フリーデル
リスボンに誘われて」のブルクハルト・クラウスナー、
「顔のないヒトラーたち」のヨハン・フォン・ビューロー、
ダーヴィット・ツィンマーシート、
フェリックス・アイトナー、
カタリーナ・シュットラー、
ルーディガー・クリンク共演。

原題「ELSER」
2015年 ドイツ制作。