おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

暖かな晴天の一日。
もやっと空が霞んでいるように見えるのは花粉のせいだろうか。

映画「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」を観た。

美しい緑広がる風景の中を、煙を上げて汽車が走り抜けてゆく。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

杖をついたヨボヨボのじじいが田舎駅のプラットホームに降り立った。
身体はだいぶ衰えているが、その観察眼は鋭い。

それもそのはず。

彼は、かの名探偵シャーロック・ホームズ
齢90を越え、田舎に引きこもって養蜂を楽しみに余生を過ごしている。
このたび、旅先の日本から山椒の若木を携え自宅に戻ってきたところなのだという。

かれこれ30年ほど前になるだろうか。
第一次世界大戦が終わりを迎え、相棒のワトスンが結婚して彼のもとを去った日、最後の事件が舞い込んできた。

この事件の顛末をいつものようにワトスンが執筆し、近年映画化されたのだが、どうもコレジャナイ感が漂っている。
ワトスンの創作によって結末が違っていたのだ。

真実の追究者としては納得できひん。

そこで彼は、この事件を含め自叙伝を書こうと決めた。

ところが、慧眼の名探偵も年には勝てぬ。
ボケが出てきたのだ。
事件の顛末ももやもやとして思い出せないし、見知った人の名前すら忘れることが多くなってきた。
これはヤバイ。

記憶が明瞭なうちになんとしても書き記さねばならない。
時間との戦いだ。

そんな時、彼は山椒のエキスがボケに良いと聞き、はるばる焼け野原と化した爆心地 広島まで赴いて若木を密輸してきたというわけさ。

果てさて、藁にもすがる思いで手に入れたこの山椒エキスパワーで、彼は事件の顛末を思い出すことが出来るのだろうか。

物語は、孤独をテーマに、30年前に手がけた最後の事件の真実に迫る、晩年の名探偵の姿を描いたヒューマンドラマ。

思い出せないのには、ボケだけに留まらぬ理由があった。

記憶の奥に封じ込めたくなるほどの、悲惨な結果に終わってしまった事件。
彼が、最後の事件で犯した失敗とは何だったのか。

現代と過去を行きつ戻りつしながら、徐々に記憶を蘇らせる彼は、人を蝕む孤独に触れ、時として真実は人を追い込んでしまうことを知る。

気難しい老人が自らの生き方を顧みて、少し丸くなってゆく姿が見どころ。

ただ、戦後の日本の風景がまるで中国の租界のように見えて仕方がない。
言葉はもちろんのこと、着こなしやお茶を注ぐ所作にも違和感があり、一気に興ざめしてしまった。
日本と山椒のエピソードはまるっと余計なのだ。
肝心の事件にもっと深みを持たせたほうが良かったように思う。
ちぐはぐでまとまりのない作品。
残念。

ロード・オブ・ザ・リング」のイアン・マッケラン
アメリカを売った男」のローラ・リニー
マイロ・パーカー、
「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」のロジャー・アラム、
「戦火の馬」のパトリック・ケネディ
ハティ・モラハン、
「サバイバー」のフランシス・デ・ラ・トゥーア
真田広之 共演。

原題「MR.HOLMES」
2015年 イギリス、アメリカ制作。