アスファルトに散った桜の花びらが風に煽られ、まるで意思を持っているかのように踊っている。
暖かな晴天の一日。
映画「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」を観た。
古代エジプトに歴史から抹消された王女がいるという。
美しく聡明な王女であったが、あいにく世継ぎにはなれなかった。
それを逆恨みした王女は、死の神セトと契約を結び父王を殺害。
さらに王座を不動のものにすべく、セトを現世に召喚する彼女。
ところが、それに感づいた忠臣らに儀式を阻まれ、恐ろしい罰が下されるのだ。
セトのしもべになった呪われし存在として生きたままミイラにされた彼女は、地下深くに封印されてしまうのだった。
そんな前置きから物語は幕を開ける。
時は変わって現代。
ここは、内戦下にあるイラク北部。
米軍の偵察兵が、空爆を受けた集落の地下に古代エジプトの像がそびえる巨大な空洞を発見した。
ペルシャならわかるが、なぜここにエジプトの像があるのだろう。
んなこたどーでもいいんだよ。
お宝、お宝さ。
そう、この偵察兵なかなかにして腹黒な野郎で、紛争の混乱に乗じたトレジャーハンティングを副業にしているのだ。
宝を求め空洞へ足を踏み入れた彼らは、満々と水銀が湛えられた仕掛けを目の当たりにする。
何かを厳重に封印しているそこは、まるで墓所というより檻のよう。
こうして彼らはためらうことなく封印を破り、水銀に沈められた棺がその不気味な姿を現す。
すわ、ツタンカーメンに次ぐ大発見か!?
輸送機で棺を英国に運ぶ彼らは、ほどなく自分たちがしでかしたことの意味を知るのだった。
封印されしエジプト王女が現代に復活。
死者を自在に操る彼女の野望を、彼らは阻止することができるのだろうか。
物語は、王女の呪いを受け不死となった男の戦いを描いたアクションアドベンチャー。
トム・クルーズ主演で「ハムナプトラ」をやってみたらこんなん出来たでござるの巻。
現世とあの世、二つの世界に身を置くセトのしもべになった人間は虹彩がもれなく二つになるようだ。
そんな、この世には存在しない異形の不気味さが見どころか。
ただ、台詞に深みも面白味もないため、ドタバタやっているわりには終始盛り上がりに欠ける。
その上、化け物大集合といわんばかりに、ジキルとハイドのエピソードを盛り込んでしまったおかげでストーリーが完全に迷走してしまっている。
砂漠の嵐がロンドンを襲う迫力のシーンに至っては「ハムナプトラ」とまるっと同じではないか。
つまらん。
どんなに素晴らしい役者を取り揃えようとも、シナリオがクソだとどうしょうもないのだということを教えてくれる駄作。
残念。
トム・クルーズ、
「キングスマン」のソフィア・ブテラ、
「アナベル 死霊館の人形」のアナベル・ウォーリス、
ジェイク・ジョンソン、
「クレイジー・パーティ」のコートニー・B・ヴァンス、
ラッセル・クロウ、
マーワン・ケンザリ共演。
原題「THE MUMMY」
2017年 制作。