おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

昼になってようやく日差しが出てきた。
ここ数日に比べ空気がひんやりしており、コタツを仕舞うべきか否か迷う。

映画「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」を観た。

時は1929年。
ここはニューヨークの老舗出版社チャールズ・スクリブナーズ・サンズ。

デスクに向かい、きびきびと原稿に赤鉛筆を入れてゆく男がいる。
背後の書棚には、「美しく呪われし者」「楽園のこちら側」「グレート・ギャツビー」「日はまた昇る」などが並ぶ。
これまでに数々の名作を世に送り出してきた編集者だ。

さて、そんな彼のもとに、無名の著者が書いた原稿が持ち込まれてきた。
「失われしもの」と題されたそれは、なんでもニューヨーク中の出版社でたらい回しにあっているらしく、ユニークではあるが評判は芳しくないとのこと。

だからといって彼はぞんざいに扱うわけでもなく、紙の束のようなその原稿を携えると、帰宅途中の汽車の中で読み始めた。

賑やかな妻と5人娘が待つ郊外の自宅に戻ったのちも原稿から目が離せない。
彼は、この自伝的な作品に原石の煌めきを見たのだ。

これはウチで出そう。

後日、出版社に乗り込んできた著者は、これまで一銭の価値も無いと言われ続けてきたもんだから感涙にむせび泣く。

ただ、執筆に4年を費やしたというその原稿はあまりにも長すぎた。
出版するからには世間に認められる良いモノを出さねばならない。

こうして二人は、翌日から二人三脚で編集作業に当たることになった。

破天荒な著者のこだわりと編集者の鋭い指摘が激突を重ね、文章が磨き上げられてゆく中で、いつしか二人の間には強い絆が芽生えてゆく。

それは、編集者と著者の信頼関係なのか。
はたまた仕事の枠を超えた友情なのか。

ベストセラーの影に名編集者あり。
物語は、編集者マックスウェル・エヴァーツ・パーキンズと作家トマス・ウルフの紆余曲折の軌跡を描いたヒューマンドラマ。

原石が宝石に変化してゆくように、リズミカルな描写で文章が磨き上げられてゆく様子に心躍らせつつ、著者トマス・ウルフが編集者宛ての献辞を添えた経緯に触れてゆく。

石ころとも原石ともつかないものを見分ける見識の高さや、著者に寄り添い、影の存在であり続ける、慎み深いプロフェッショナルとしての矜持に心打たれる。
とどのつまり、編集者とは著者の女房みたいな存在なのだ。

一方で、肝心の女房や恋人といった女性陣には、彼らの仕事に注ぐ情熱はいまひとつ理解してもらえぬようで、そのほろ苦さが世のオッサンたちの共感を呼びそう。
トレードマークであった帽子を取るラストシーンが心に沁みる一作。

コリン・ファース
ジュード・ロウ
ニコール・キッドマン
Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」のローラ・リニー
ガイ・ピアース
アバウト・タイム 愛おしい時間について」のヴァネッサ・カービー、
マネーモンスター」のドミニク・ウェスト共演。

原題「GENIUS」
2016年 イギリス、アメリカ制作。