おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

手紙は憶えている

新玉ねぎが出回り始めた。
薄日の差す曇り空の一日。
予報では午後から雨になるらしい。

映画「手紙は憶えている」を観た。

ベッドで目覚めるじいさん。
おや?
隣に寝ているはずの妻がいない。
妻の名を呼び、ヨロヨロと寝室を出た彼にスタッフが駆け寄る。

ああ、ここは老人ホームか。

奥様は一週間前にお亡くなりになられましたよ。
大丈夫ですか?

混乱するじいさん、どうやら認知症が進んでいるようだ。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

今夜はユダヤ教の初七日。
じいさんが妻の喪に服す最後の晩だ。

じいさんは妻亡き後、決行すると決めていたことがある。
でも、何だったか忘れちまったよ。

そんな彼のために、同じホームに入所している友人が、全て手紙に書き出してくれていたようだ。
親戚一同が集まった法要の後、友人からその封筒を手渡された。

封筒には手紙のほか、高額紙幣と列車のチケットが入っている。
手紙の指示通り、じいさんはそれらをセカンドバッグに入れるとホームを抜け出し、友人が手配したタクシーに乗って駅へ向かう。

腕に囚人番号が刻まれているじいさんと友人は、共にアウシュヴィッツの生き残りだ。

多くのナチス親衛隊員が、終戦間近に死んだ捕虜の身分を盗み逃亡を図ったという噂があった。
ホロコースト調査機関サイモン・ウィーゼンタール・センター協力のもと友人が調べ上げた結果、収容所の区画責任者のひとりが40年代に米国へ移住し、ルディ・コランダーの名で生きていることが明らかになった。

同時期に米国へ移住したルディ・コランダーは4名。
このうちのいずれかが、彼らの家族を皆殺しにした憎っくき宿敵だ。

こちらも高齢だが、敵も同じく高齢者。
ぬるぬると裁判など待っている時間的余裕はない。
直接この手で裁くしかないのだ。

そこで車椅子で身体の自由が利かない友人に代わり、じいさんがヒットマンとして赴くことになった。

でもね、認知症がだいぶ進んじまって、寝入るたびに記憶がきれいさっぱり無くなっちまう厄介なじいさん。
目覚めてもここがどこだかわからず混乱し、おろおろと妻の名を呼ぶ。
ポケットの手紙を読みようやく現状を把握する有様である。

いわば、この手紙が彼の旅の命綱だ。

足元もおぼつかないし、説明された事柄もいっぺんには理解できない。
果てさて、こんな調子で彼らの復讐は無事成し遂げられるのだろうか。

物語は、復讐をテーマに、ナチスの残党を探し米国内を旅する痴呆老人の姿を描いたサスペンス仕立てのロードムービー

誰もが避けて通れぬ老いを見つめつつ、セカンドバッグに拳銃を忍ばせた危なっかしいじいさんの旅路をひやひやしながら見守る。

戦後70年が過ぎた今も、当事者が抱える苦しみは癒えることがない。
死を迎えるその日まで重荷を背負い続けなくてはいけない彼らにとっては、苦しみでしかない痴呆すらも救済になりうるのだと物語はいう。

じいさんの思考や行動に合わせたスローな雰囲気のせいか殺伐さをほとんど感じさせない物語は、終盤思いもよらぬ展開を迎える。
落差のありすぎる衝撃の結末にのけぞる一作。

「Dearダニー 君へのうた」のクリストファー・プラマー
マーティン・ランドー
「ゾンビーノ」のヘンリー・ツェニー、
「バトル・オブ・ライジング」のブルーノ・ガンツ
「きっと ここが帰る場所」のハインツ・リーフェン、
「シークレット・アイズ」のディーン・ノリス、
ダ・ヴィンチ・コード」のユルゲン・プロホノフ
「ハウンター」のピーター・ダクーニャ、
ジェームズ・ケイド共演。

原題「REMEMBER」
2015年 カナダ、ドイツ制作。
PG-12

ソーシャルメディアのボタンがあちこち付いとるけど、イロイロ面倒やから押さんでええんやで。