おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

メッセージ

少し前からしとしとと雨が降り始めた。
今日は一日雨になりそうだ。
一週間前に蒔いたバジルの鉢から小さな芽が顔を覗かせた。
ハダニにたかられ毎年のように失敗しているバジル栽培。
果たして今年は上手くいくだろうか。

映画「メッセージ」を観た。

それは飛来したわけではない。
靄と共に忽然とそこに現れたのだ。

ここに、大学で教鞭を執る言語学の女教授がいる。
授業の最中、生徒たちがざわめき出した。
緊急のニュース速報が流れているという。

それは40分ほど前に、この大学のあるモンタナ州に出現した巨大な物体を告げるニュースだった。
高さ450メートルにも及ぶ「柿の種」型をしたそいつは、世界12ヶ所に同時に出現したのだという。

すわ、エイリアンの宇宙船か!?

政府は非常事態を宣言。
巷は世界の終わりが到来したかのような混乱に陥る。

とはいえ、不治の病で愛娘を亡くし既に絶望の淵にあった彼女にとって、人類の危機などどうでもいいことのように思われた。

さて、そんな彼女のもとに軍の関係者がやってくる。
エイリアンの未知なる言語を解読してもらいたいというのだ。
なんと、既にエイリアンと接触が試みられていたらしい。

いきなり攻撃してこないところをみると友好的な目的でやってきたのだろうか。
いやいや、そんなわけがない。
侵略の人類史を鑑みれば友好的な接触などありえないのだ。
何かあるはずだ。

あんたら何をしに来たん?

これを聞き出したい。
こうして彼女は、物理学者や軍人らで構成されたチームに入り、エイリアンとの対話、セッションに挑む。

セッションは18時間ごとに扉が開く「柿の種」の中で行われる。
内部は重力の方向が異なり、2時間ほどで酸素がなくなり強制的に排出されるのだという。
つまり1回あたりのセッションのリミットは約2時間だ。

さてさて、酸素ボンベを背負った防護服に身を包み、恐る恐る内部に向かった彼女らが目にしたのは、靄の中から出現した2体の7本足タコ型エイリアンだった。

ところが、対話は早々に断念せざるを得なかった。
それは動物のいななきにしか聞こえず、埒が明かない。

どうすれば彼らと意思の疎通が図れるのだろう。
その時、愛娘の思い出がふいに蘇り、彼女にヒントを与える。

言葉をかたち作るもの・・・文字はどうやろか?

でも、タコに文字はあるんかいな?

心配御無用。
彼女が書いたホワイトボードの文字に反応し、タコは墨のような靄を操り空間に紋様を描いて見せたではないか。

ああ、これが彼らの文字なのだ。

でも、この紋様が何を意味するのか解読するにはセッションも何度も重ねなくてはいけない。
また、表現の違いよる齟齬が生じてはマズイ。
対話は慎重に運ぶ必要があった。

一方で、恐怖を煽る過激派やマスコミによって、不安に駆られた人々は先制攻撃を仕掛ける気満々だ。

彼女たちにはもう時間が残されていないのだった。

物語は、エイリアンとの対話を試みる言語学者の姿を通し、「現在」という時間の概念が存在しない世界観に触れるファンタジックなSFミステリー。

人類は一枚岩にはなりえない。
高度な文明を持つエイリアンとの全面戦争を回避するにはどうしたらいいのか。
ゼロサムゲームによる平和的答えを導き出そうとする彼女たちの姿をヤキモキしながら見守る。
よくあるエイリアンの侵略モノとはだいぶ趣が異なり、摩訶不思議なコンタクトよりも、このヤキモキの占める割合がとても大きい。

未来は不確定なものではない。
過去と同じく完結している。
よってこの世に偶然はなく、全ては必然なのだと物語はいう。

我々の時間という概念を覆す終盤にかけてのストーリー展開が見どころ。
物語全体を靄のように覆いつくしていたヤキモキが一気に晴れる瞬間である。
ただ、自覚のない特殊能力という側面では興味深い描写だったが、エイリアンがやってきた動機付けに関しては、一転して子供だましのこじつけみたいで腑に落ちない。
シナリオの甘さが惜しい一作。

「人生の特等席」のエイミー・アダムス
ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー、
フォレスト・ウィテカー
ドクター・ストレンジ」のマイケル・スタールバーグ
マーク・オブライエン、
ツィ・マー共演。

原題「ARRIVAL」
2016年 制作。