ぼんやりと薄日の差す穏やかな一日。
今朝は冷え込んだようで、いつもより空気がひんやりとしていた。
2週間ほど前に植えた再生ねぎの生育がいまひとつだ。
根を長いままにせず、もっと切り詰めた方がよかったのかもしれない。
映画「遥か群衆を離れて」を観た。
時は1870年。
ロンドンから南西へ320キロ、ヒツジが草を食む草原の向こうに水平線が見えるドーセットの地。
ここで牧羊を営む素朴な青年がいる。
ある日彼は、颯爽と馬にまたがり、木々や草原が織り成す風を全身に受けて疾走する若い女性に出会った。
その喜びに満ちた佇まいは、まるで自然と戯れる女神のよう。
たちまち恋に落ちた青年。
土地に根ざし、小さな牧場主として身を立てようとしている彼に相応しい女性に思えた。
冬の間だけおばの家に手伝いに来ているのだという彼女。
青年は思い切って求婚するのだが、彼女は首を縦には振らない。
彼女は自立心が強く、誰かの所有物になるのはまっぴらご免だという。
よって即答は出来ないので、しばらく考えさせて欲しいとの事だった。
なんかメンドクサイ女だな。
ウーマンリブの先駆けかな。
ところが、彼の夢は早々に潰えてしまう。
ああ、なんということだろう。
未熟な牧羊犬が彼のヒツジ200頭を断崖に追い立て墜落死させてしまうのだ。
全てを失ってしまった青年は、この土地を去るよりほか仕方がないのだった。
一方、彼女には思わぬ幸運が舞い込んで来る。
おじの遺産を相続し、大きな屋敷を構える大農場主になったのだ。
早速、廃れた農場の大改革に乗り出し、臆することなく男社会へと斬り込んで行く。
ウーマンリブとしては腕が鳴る案件だよね。
さて、こうして別々の道を歩むことになった二人であるが、放浪の身にあった青年が、偶然にも彼女の農場に現れるではないか。
とはいえ、今や女主人と使用人だ。
釣り合いの取れる立場ではない。
もうかつての二人には戻れないのだった。
物語は、トーマス・ハーディの同名小説をもとに、運命のいたずらに翻弄され、惹かれ合いながらもすれ違い続ける恋人たちの紆余曲折を描くラブロマンス。
素朴な羊飼い。
裕福でダンディな大農場主。
貴族出身のイケメン軍人。
彼女に求婚するこれら3人の男たちの分岐点を経て、全ての運命は最悪の方向へとひた走ってゆく。
すわ、待ち受けるのはバッドエンディングか?
己の行動が他人にどんな感情を抱かせるか考えもしない、このヒロインの自覚のない罪深さが受け入れがたい。
本人の意図するところでないにせよ、関わる男たちをことごとく不幸に陥れてゆく彼女は、魔性の女と呼ぶのにふさわしいのではないか。
そんなヒロインの生き方に共感できず、観客にモヤモヤとした感情を抱かせたまま物語は終わりを迎える。
断崖から落ちてゆくヒツジたちの、集団自殺を思わせるシーンが忘れられない一作。
「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガン、
「フランス組曲」のマティアス・スーナールツ、
「クィーン」のマイケル・シーン、
「パイレーツ・ロック」のトム・スターリッジ、
「トランストリップ」のジュノー・テンプル共演。
原題「FAR FROM THE MADDING CROWD」
2015年 イギリス、アメリカ制作。
PG-12