おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

最高の花婿

昨夜からしとしと降り始めた雨は今日一日続くようだ。
ここ数日、行灯仕立ての植木鉢が転げるほどの強風が吹き荒れやや乾燥気味だったので、土が落ち着く恵みの雨になりそう。

映画「最高の花婿」を観た。

ここロワール地方のシノン市役所で挙式がおこなわれている。
市長が執り行う人前式だ。
複雑そうな面持ちで参列している夫婦。
一年後、そしてさらに一年後と繰り返される挙式のたびに、二人の表情は曇ってゆく。

3人の娘たちが続けざまに結婚したのだ。
夫婦にとってめでたいことではないか。

いや、そうでもないのだ。
本当はかつて自分たちがそうだったようにカトリック教会で娘たちの式を挙げさせたかった。
でも、それが叶うことは無かった。
なぜなら3人の婿たちはいずれも移民で、それぞれにアラブ人、ユダヤ人、中国人だったのだ。
カトリック系フランス人の一家は一気に国際色豊かになってしまったよ。

今日は、生まれて半年になる孫の割礼式に呼ばれてやってきた夫婦。
赤ちゃんになんて残酷なことするのだろう。
しかも切り取った包皮は庭に埋めるのがしきたりなのだという。

・・・庭に埋めるのなら切り取るなよ。

式を執り行うラビを前に、思わす親父はボヤいちまったよ。

フランスは移民を多く受け入れてきた国だ。
当然のごとく異文化を受け入れる寛容な人間を自認してきた夫婦であったが、文化や宗教観の違いに戸惑うことばかりだ。

イスラム教のハラールユダヤ教のコーシャといったメンドクサイ決まり事があるものだから、一家勢ぞろいで摂る食事ひとつとっても気を使うよ。

また話題選びも難しい。
ステレオタイプな人種や宗教観を表したジョークの一言が、侮辱につながることも多々ある。
こうしたささいな言葉の掛け違いから、楽しいはずの食事の場が気まずいどころか大喧嘩にまで発展してしまった。

ああ、このまま一家はバラバラになってしまうのだろうか。

さて、それから一年半。
一家に吹き荒れる誤解の嵐もようやく落ち着きを見せ始めていた頃、今度は末の四女が婚約を決めたという。
もう異文化はコリゴリと内心思っている夫婦にとって四女の婿は最後の砦だ。
しかも、お相手は同じカトリックだというではないか。

すわ、ついに理想の婿が登場か!?

こうして、期待にぬか喜びをする夫婦の前に現れたのは、なんとコートジボワール出身の黒い肌をした婿であった。

物語は、多様なルーツを持つ婿たちによって多国籍になった一家の紆余曲折をユーモラスに描いたコメディ。

思い込みや被害妄想といった、全くくだらないことで我々は自ら壁を作りいがみ合っているのだと物語はいう。

異文化に対して寛容だと自認している人に限って、案外そうでもなかったりするものだ。
我々が持つ、潜在的な偏見と差別意識をあぶり出す面白い一作。

クリスチャン・クラヴィエ、
シャンタル・ロビー、
フレデリック・ベル、
メディ・サドゥン、
ジュリア・ピアトン、
アリ・アビタン、
エミリー・カン、
「パリ・エキスプレス」のフレデリック・チョー、
エロディ・フォンタン、
ヌーム・ディアワラ、
パスカル・ンゾンジ、
最強のふたり」のサリマタ・カマテ、
タチアナ・ロホ共演。

原題「QU'EST-CE QU'ON A FAIT AU BON DIEU?」
2014年 フランス制作。