おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

AIR エアー

天気は回復したものの、季節が逆戻りしたかのように空気が入れ替わった。
冷ややかな風吹く晴天の一日。

映画「AIR エアー」を観た。

ここは地下深くに造られたシェルター。
ミサイル格納庫を突貫工事でシェルターに仕立てた施設だという。
配管が縦横無尽に走る狭い空間に古びた機器が雑然と並んでいる。

今、二人の男が半年振りにスリープ用のカプセルから目覚めた。
施設内の空気に順応するまでの間しばしもがきつつ、彼らはぼちぼちと仕事に取り掛かる。

空気は限られている。
そうゆっくりしている時間はないのだ。

化学兵器によって外気は汚染され人類は死に絶えた。

彼らはそんな終末世界を生きる技師だ。
科学者や技師、医師といった文明の継承者たちを、仮死状態でスリープさせている施設のメンテナンスを担っている。
いわば、人類の未来を救う仕事だ。

この文明の継承者たちが目覚めるのは地上の空気が元の状態に戻った時。
それが30年後になるのか150年後になるのかは分からないという。
それまで、半年ごとの定期メンテナンスを繰り返しながら彼らも眠る。
なんとも気の遠くなるような話だ。

通信はできないものの、他のシェルター施設からコンピューターに送られてくる定期メンテナンス報告が、ささやかながら彼らのモチベーション維持に役立っている。
他にもがんばっている仲間がいる。
そう思うだけで多少なりともやる気が出てくるじゃないか。

さて、いつものように定期メンテナンスを終わらせ眠るつもりが、施設の老朽化のせいか今回はトラブルが多発。
彼らが眠るスリープ用カプセルの一台が壊れ、危うく死にかける事態になった。

しかも、じき空気がなくなるというのに予備のカプセルがないではないか。

ひとりがいう。
スリープさせてる科学者のひとりからカプセルを奪ってしまえばいいんじゃね?
ここはひとつ犠牲になってもらおうぜ。

何を言うだ!
彼らは希望の種だ。そんなごどは許されね!

度重なるトラブルと絶体絶命ともいえる状況下において、二人の間にはいつしか互いに対する疑心が頭をもたげてゆくのだった。

物語は、文明崩壊後の地下シェルターという密閉空間で繰り広げる会話劇を描いたスリラー。

人の心は孤独と絶望によって蝕まれてゆく。
他人を犠牲にしても生き残ろうとする男と、別の手段を模索しようとする男。
果たして、狂っているのはどちらだろうか。
また、技師の前に現れては語りかける女の幻覚は何を意味するのか。

些細な出来事も重要な意味を持つため目が離せない。
謎めいた状況と刻々と迫り来るタイムリミットが恐怖を盛り上げ、その息苦しい空気感までが伝わってくるようだ。

狂いも場合によっては救いになるのだと物語はいう。

正常な精神に、この状況は耐え難い。
銃口を向けた男が引き金を引かなかった理由が分かった。
ほぼ会話劇だけで観客をぐっと惹き込む一作。

思う存分息が出来るってありがたい。

「セブンス・サン 魔使いの弟子」のジャイモン・フンスー
スティーラーズ」のノーマン・リーダス
サンドリーヌ・ホルト共演。

原題「AIR
2015年 制作。