おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ブルーに生まれついて

夕方になって少し風が出てきた。
日差し眩しい晴天の一日。
種を蒔いてからほぼ30日。
もはや蒔き直しかと思われたフウセンカズラがまたひとつぴょっこり芽を出した。
他も出てくるだろうか。
もう少し様子をみてみよう。

映画「ブルーに生まれついて」を観た。

時は1966年、イタリアはルッカ
拘置所の床に崩れるように横たわる男がいる。
うつろな目線の先にはトランペットが転がる。
そこからのっそりと大きな毒蜘蛛が這い出してきた。
それはさながら彼の身体に巣食う病魔のようだ。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

彼はハリウッドから迎えに来た映画監督の助けで、晴れてこの檻の中から自由の身となった。
監督いわく、彼自身が主演をつとめる自伝映画を製作したいのだという。

へえ、ずいぶんと有名な人なんだね。

彼の名はチェット・ベイカー
50年代、ジャズの殿堂といわれるニューヨークのクラブ バードランドで、マイルス・デイヴィスディジー・ガレスピーと競演し、全米一位の人気を誇ったジャズトランペッターにしてシンガーである。

それがどうして拘置所なんぞに転がってるワケ?

多くのスターたちがそうであったように、彼もまた麻薬の誘惑に負けてしまったひとりであった。

この映画出演は「ジャズ界の伝説の復帰」と銘打たれ、麻薬で保護観察下にある彼が、再びスターとして返り咲くチャンスでもあった。

ところが、撮影に入った主演映画は早々に頓挫してしまう。
踏み倒した借金のせいで、彼は麻薬の売人たちの襲撃を受けたのだ。

なんてこと。
この襲撃で頬の骨は砕け、前歯まで失ってしまう。
トランペッターとしては致命的な怪我だ。
自業自得とはいえ、才能と28年間の練習が水の泡と化してしまった。
トランペットが吹けない彼には、もはや死しか残されていないのだった。

彼はなぜ麻薬に溺れてしまったのだろうか。
物語は、再起をかける男の姿を追いつつ、その原点ともなる過去の経緯に迫ってゆくヒューマンドラマ。

彼の生き様を、切なく物悲しいジャズのメロディーが彩る。

誘惑の多い環境とスターであり続けなくてはならないプレッシャー。
これらが、いとも簡単に彼らを麻薬へと走らせてしまう。
不祥事を起こすスターの気持ちがほんの少し理解できるような気がする。

ただ、何も知らない観客には、よくあるスターの凋落話にしか見えない。
酒に溺れた「アイ・ソー・ザ・ライト」と同じく、アーチスト本人を深く知っていれば楽しめたかも。
残念。

イーサン・ホーク
「パージ アナーキー」のカルメン・イジョゴ、
「天才スピヴェット」のカラム・キース・レニー、
トニー・ナッポ、
ダン・レット、
ケダー・ブラウン、
ケヴィン・ハンチャード、
「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」のスティーヴン・マクハティ
ジャネット・レイン・グリーン共演。

原題「BORN TO BE BLUE」
2015年 アメリカ、カナダ、イギリス制作。
R-15+