おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ある天文学者の恋文

朝からざあざあと雨降りの一日。
蒸し暑いような、ちょっと肌寒いような微妙な体感だ。

映画「ある天文学者の恋文」を観た。

夜明け前のホテルの一室で、熱い抱擁を交わす男女がいる。

君について僕がまだ知らないことはないかい?
執拗に尋ねる男の質問を、女は言葉巧みにはぐらかす。

こうして密会を終えた男は、自分の部屋へ舞い戻ると何事も無かったかのようにチェックアウト。

なるほど、こうすれば浮気もバレないのだな。

暁の仄青い空間と化したホテルの長廊下を、別々のドアから日常に戻ってゆく。
親子ほど年の離れた不倫カップルの、つかの間の逢瀬を捉えたオープニングロールから物語は幕を開ける。

彼女は、スタントマンのアルバイトのかたわら大学で天文物理学を学ぶ学生だ。
著名な天文学教授にして恩師でもある彼と付き合い始めてかれこれ6年になる。

講演で世界を飛び回る教授。
会える機会は稀で、もっぱらメールやスカイプが彼らのコミュニケーション手段だ。
ところが教授は忙しいのか、ここしばらく連絡が途絶えがちだった。

そんなある日、教授が出席するはずだった講演の冒頭、代理講演者の口から思いがけない訃報が告げられる。
教授が数日前に亡くなったという。

そんなばかな!
つい先ほど、講演には行くなと彼からメールが着たばかりじゃない。

本当に教授は死んでしまったの?
彼女は混乱する。

ほどなく、彼から突然の死の知らせを詫びるメールが届くではないか。

以来、悲しみに暮れる彼女の行動を見透かすかのように、絶妙のタイミングで教授からメールやらビデオメッセージの入った小包が届く。

恋人のショックを和らげようとする教授の粋な計らいなのだろうか。
それはまるで、彼がまだこの世に存在しているかのようだった。

物語は、残された恋人の行く先を憂う教授が作り上げた、大掛かりなサプライズの謎をひも解いてゆく切ないラブストーリー。

彼女の行動の全てを予測するシステムを構築し、死してなお彼女にメッセージを送り続ける教授の真意とは何か。

メールやビデオを通じた二人の時を越えた対話を、数億年前に滅んだ星の瞬きになぞらえている点がロマンチックだ。

死んだ夫から手紙が届く「P.S.アイラヴユー」と趣が似ているが、ふつふつと拒絶反応が湧き起こり、彼らのロマンスに浸りきることが出来ない。
なぜなら二人が不倫関係だから。

どんなに冷え切っていたとしても、家族の存在を過ちという言葉で片付けて欲しくない。
目頭熱くなる一方で、男の身勝手さにはらわたが煮えくり返る一作。

「その女諜報員 アレックス」のオルガ・キュリレンコ
リスボンに誘われて」のジェレミー・アイアンズ
「ディセント」のショーナ・マクドナルド、
パオロ・カラブレージ、
アンナ・サヴァ共演。

原題「LA CORRISPONDENZA」
2016年 イタリア制作。