おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ゴーン・ベイビー・ゴーン

七月に入り一気に真夏がやってきた。
連日のように蒸し暑い日が続いている。
すくすくと育ち、収穫も出来るようになった我が家のローズマリー
独特の香りが料理を引き立てる頼もしい奴だが、ここにきて葉が少し黄色くなってきたので、思い切ってひとまわり大きい9号鉢に植え替えをした。
思ったとおり鉢いっぱいに根が張り詰まっていたようだ。
来年は10号鉢だろうか。
鉢が大きくなるにつれ作業もしんどい。

映画「ゴーン・ベイビー・ゴーン」を観た。

人間をかたちづくるのは自分以外の何かだ。
それは住む街であったり、隣人たちや家族。
ここの住人にとってはそうしたものが誇りだという。

古びて傷んだ家々が立ち並ぶボストンの下町。
ここに暮らす人々の日常を捉えた映像から物語は幕を開ける。

さて、そんな街の一角で事件は起こった。
4歳の幼女が家から連れ去られ行方不明になったのだという。
警察や野次馬がぐるりと取り囲む物々しい中、シングルマザーとその親族が押しかけたマスコミのインタビューに答えている。

脅迫も無いまま運命の分かれ道である72時間が経過。
誘拐された子供の半数はこの段階でもう助からないという。

姪の安否を気遣う伯父夫婦は、もはや警察に任せて置けぬと、藁にもすがる思いで街の探偵事務所のドアを叩く。

彼らを迎えたのは思いのほか若い男。
パートナーと探偵業を営むこの若造は、もっぱら夜逃げした連中の追跡調査が専門だという。
誘拐事件は初めてだが、地元出身で街の事情に詳しく裏の世界にツテがあるのが彼の強みである。

無残な遺体を目の当たりにするのが辛いとパートナーは乗り気でなかったが、被害者は地元の人間。
しかも子供だ。
何とか助けてやりたい。

さっそく刑事たちと連携をはかり、聞き込み捜査を始めた若造。
警察は小児性愛者や麻薬常習者に目星をつけていたようだが、どうやら事件の発端は幼女の母にあるようだ。

この女、高校時代から名うてのワルで、酒とクスリに溺れた挙句、運び屋までやっているアバズレであった。
ネグレクトも同然の彼女は、我が子が連れ去られたというのにあっけらかんとしたものだ。

こうしてアバズレの身辺を洗い、聞き込みを重ねれば重ねるほど、幼女の身の上が気の毒に思えてならない事実が次々と浮かび上がってくるのだった。

子供を狙った事件を追う、若き探偵がやがて目の当たりにする真実とは何か。
物語は、下町で起こった幼女誘拐事件の顛末を描いた社会派ミステリー。

最悪の結末しか思い浮かばない焦燥感に満ちた捜査の後、若造が辿り着いた答えに愕然とする。

彼は正しき行いをしたのか。
それとも、取り返しのつかぬ過ちを犯してしまったのだろうか。
その判断は観る者に委ねられている。

法は子供を守っちゃくれない。
にもかかわらず、なぜ彼は子供の未来のために尽力してきた人々の苦労を水の泡にしてしまったのだろう。

ここで気になるのが、冒頭で述べられていた街の誇りである。
まともな親のもとでないとまともな人間が育たないという世間の認識は、掃き溜めのようなこの街に生まれ、曲がりなりにもまっとうに生きてきた彼自身の人生を否定することに繋がる。
結果、彼は現実から目を背け、信じる誇りに縋るしかなかったのだ。
それが最悪の選択だとしても。

自身の正義に酔いしれるあの若造は、十数年後、何を見るのだろうか。
救いの無い結末に暗く沈む一作。
つい先頃、虐待の犠牲になった子供の痛ましい事件が頭をよぎる。

「ザ・ブリザード」のケイシー・アフレック
「かけがえのない人」のミシェル・モナハン
「グースバンプス モンスターと秘密の書」のエイミー・ライアン
マデリーン・オブライエン、
「ザ・タウン」のタイタス・ウェリヴァー、
エイミー・マディガン
「その女諜報員 アレックス」のモーガン・フリーマン
「疑わしき戦い」のエド・ハリス
ジョン・アシュトン、
アサシン クリード」のマイケル・ケネス・ウィリアムズ、
「ザ・タウン」のスレイン、
「トワイライト」のエディ・ガテギ、
「ミッドナイト・ガイズ」のマーク・マーゴリス共演。

原題「GONE BABY GONE」
2007年 制作。