おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

フェンス

雨脚はだいぶ弱まったものの、依然雨は降り続く。
各地で起きている豪雨災害が気になる一日。

映画「フェンス」を観た。

時は1950年代。
二人の作業員を後部に乗せ、ゴミ収集トラックが坂の街を行く。
良き相棒である彼らはピッツバーグ市の清掃局で働いている。
仕事の合間も絶え間ない、彼らのおしゃべりから物語は幕を開ける。

仕事も終わり、相棒と一緒に古びた我が家へ戻ってきた男。
御年53歳になる彼は、昇進できない今の職場に不満を持っている。
とはいえ、文盲で手に職があるわけでもない。
今日も裏庭のポーチで相棒と妻を相手に愚痴を並べ、酒で仕事の不満を紛らわせるしかないのだ。

ぼやき続ける彼は、全ては黒人であるが故だと断言する。
白人と違い信用が無いためローンが組めず、何十年とコツコツ勤め上げても古家ひとつ買うことができなかった。
この古家は、傷痍軍人である弟の見舞金で賄ったものだという。

古家ゆえ修理費用もかさむ。
それでも、ようやく手に入れた自慢の我が家だ。
今後新たに隣家との境にフェンスを作るべく、高校生の息子と日曜大工に励んでいる。

さて、その息子が、このたび得意のフットボールで大学のオファーを受けた。
大学に行けるだけでなく、将来はプロ選手としての道が開けるかもしれない。
親なら喜んで行かせてやりたいところだ。

ところが彼は違った。
肌の色の違いを理由にプロ野球選手としての道を断たれた過去を引き合いに出し、大学への進学を断固として認めず、息子には手に職を付けさせるべきだというではないか。

なぜ彼は、息子の夢や将来を潰しにかかるのだろうか。

物語は、ある黒人一家の葛藤を描いた会話劇。
彼らの会話から黒人の歩んできた暗い歴史、そして支配的な親父の半生を読み解いてゆく。

社会に虐げられた経験と家族を背負う責任からいつしか支配的になり、親父が嫌で家を飛び出したはずなのに、自分もまた憎んでいた親父と同じ毒親の道を辿っている。
そんなもどかしい男の生き様を描き出す。
この親から子へと引き継がれる呪いのような悪習に嫌悪感を覚えずにいられない。

本来は家族を守るために築かれなければならなかったフェンス。
しかしフェンスは男の心に存在していたのだ。
憎んでいた親父はもちろん、社会の変化や家族の心に目もくれようともしない頑なな彼の心に。
そんな気がする。
こんな親父は嫌だ。
とても心地の悪い一作。

デンゼル・ワシントン
ペントハウス」のスティーヴン・ヘンダーソン
「ブラックハット」のヴィオラ・デイヴィス
ジョヴァン・アデポ、
ラッセル・ホーンズビー、
奇跡のシンフォニー」のミケルティ・ウィリアムソン、
サナイヤ・シドニー共演。

原題「FENCES」
2016年 アメリカ、カナダ制作。