おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ノック・ノック

引き続き猛暑の一日。
湿度との兼ね合いもあるが、徐々に身体が慣れてきたのか34度までならばそこそこ涼やかに感じられるようになってきた。

映画「ノック・ノック」を観た。

ここはロサンゼルス市ハリウッド地区。
ビーチに、そして山肌に沿って大邸宅が立ち並ぶ風光明媚な景観から物語は幕を開ける。

その一角で幸せに暮らすオッサンの一家がある。
彼は建築家。
妻は現代造形アーティストで、家には所狭しと色鮮やかな作品群が並ぶ。

さて、今日は父の日。
仕事が一段落した妻は休暇の子供たちを連れビーチの別荘に向かうという。
あいにく彼は仕事があるので居残りだ。
まあ、父ちゃんは一家の稼ぎ頭だから仕方がないよね。

妻と子供たちを送り出し、仕事に没頭するうちにすっかり夜も更けた。
おや、いつの間にか外は嵐だ。

ふいに玄関をノックする音が聞こえた。
若い女がふたりずぶ濡れで立っている。

なんでも、タクシーでパーティにやってきたものの、住所を間違え困り果てているという。
閑静な住宅街だ。
流しのタクシーなど通ることもないだろう。
そこで彼はタクシーを呼んでやることにした。

やや待ち時間がある。
その間、ずぶ濡れのまま外で待たせておくのはさすがに気の毒だ。
彼は家の中に招き入れ、タオルを差し出す。

ところが、その親切心につけ込み、女たちは次第にずうずうしく大胆になってゆく。
客室乗務員だというが、セクシーなその姿はどう見てもコールガールではないか。

その時、仕事に忙殺され夫婦生活がご無沙汰であった男にふと魔が差した。
女たちの強引な誘惑に抗いきれず、ついにめくるめく快楽の世界へと落ちてゆく。

ほんの出来心だったが、快楽も終わってしまえばただの悪夢。
翌朝目覚めた彼は、たちまち後悔に襲われる。

でももう済んだことだし。
家族にバレなきゃいいし。

ところが困ったことになったよ。
女たちは居直り帰ろうとしないのだ。
通報しようにも未成年を理由に脅しにかかるではないか。
欲に負けた自身の不始末とはいえ、どえらいことになってしまった。

果てさて、この妖しげな女たちの目的とは何か。

物語は、嵐の晩に見知らぬ女たちを招き入れたオッサンの顛末を描いたサイコスリラー。

どんなに豊かで幸せな暮らしを営んでいても性的な誘惑には抗えない。
そんな男の弱さが見て取れる。

助平心に負けたオッサンに社会的制裁を加えるというのはおそらく方便に過ぎない。
たとえオッサンが誘惑を跳ね除けたとしても、このサイコパス女たちがどのみち暴虐の限りを尽くすのは目に見えている。
幸せな家庭を憎悪する彼女たちのすさまじい悪意は、観る者の心の奥底に潜む嫉妬心を煽り立てているかのよう。

それにしても、何の落ち度もない家族が巻き込まれるのはあまりに理不尽で救いがない。
作り手の歪んだ心が透けて見える胸くそ悪い一作。

キアヌ・リーヴス
ロレンツァ・イッツォ
「エクスポーズ 暗闇の迷宮」のアナ・デ・アルマス、
アーロン・バーンズ、
イグナシア・アラマンド、
コリーン・キャンプ共演。

原題「KNOCK KNOCK」
2015年 制作。
R-15+