おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

台風が近づく曇り空の一日。
昨日に引き続き涼やかで過ごしやすく、猛暑にへばっていた蝉たちも心なしか元気に鳴いているようだ。
暴風雨に備え日除けをたたんだり、土が飛ばされないよう植木鉢群をダンボールの避難所に格納しなくては。

映画「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」を観た。

ここはニューヨーク ブルックリン。
都会の町並みの中、愛犬を連れて日課の散歩をする老人の姿から物語は幕を開ける。

彼は、教師を定年退職した妻と暮らす肖像画家。
黒人と白人の結婚が世間に認められていなかったばかりか、州によっては禁止されていた時代に二人は出会い、家族の反対を押し切って結ばれた。

時代と共にこの街も変わり、今じゃすっかりオシャレな街になってしまったけれど、彼が結婚したばかりの妻と越してきたブルックリンはド田舎だったという。
おかげで、彼が住むこのアパートも貧乏画家だった当時ですらなんとか手が届いたものだ。

5階の窓から眺める景色は今なお素晴らしい。
でもね、この古アパート、エレベーターが無いんだ。
老いた彼にはだんだん階段を登るのがしんどくなってきたよ。

そこで、そんな夫の身体を労わる妻のたっての提案で、この家を売りに出し、その資金で新たにエレベーター付きの家を購入することにした。

二人の不動産エージェントを担う姪の話によれば100万ドル以上の価値はあるという。
たた、ちょっと時期が悪かった。
おりしも潜伏するイスラム系テロリストによって街は不穏な空気に包まれており、不動産価格が下落傾向にあったのだ。

決して豊かではない彼らに、病気を患う愛犬の高額医療費も重くのしかかってくる。
新居の購入費用や今後の生活費も含めて、少しでも高値で売れるといいのだけれど。

さて、こうして新聞に広告を打ち内覧会を開くことにした。
冷やかしなのか、はたまた本気なのか。
続々とやってくる個性豊かな顧客たちの相手をしていると、40年住み続けた我が家をいよいよ手放す寂しさが心をよぎる。
そして何かにつけて過去の懐かしい思い出がよみがえってくるのだった。

果てさて、老夫婦はアパートを高値で売り抜け、念願のエレベーター付き新居へ引越すことが出来るのだろうか。

物語は、ニューヨークを舞台に、不動産を巡る駆け引きに翻弄される老夫婦の騒動を描いたヒューマンドラマ。

不動産取引はのるかそるかの駆け引きだ。
そんな人生の大きな節目を迎えるに当たって、ややもすれば冷静さを見失いつつあった二人は、過去の思い出と行く先々の内覧会で出会う顧客たちとの交流を通し、自分たちにとって今本当に必要なものは何だろうかと、ふと自らを省みる。

ネガティブな意見にはユーモアで答え、ポジティブな思考に変えてしまう素敵な夫婦関係に恐れ入った。
常に互いを第一に思い遣り、困難をも喜びに変えてきた二人に理想の夫婦像を見たような気がする。
こんな風に年を重ねていけたらいいな、観る者にそう思わせる心温まる素敵な一作。

ゴーン・ベイビー・ゴーン」のモーガン・フリーマン
「クーパー家の晩餐会」のダイアン・キートン
「サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶」のシンシア・ニクソン
テッド・ソッド、
ミリアム・ショール、
マディー・コーマン、
死霊館」のスターリング・ジェリンズ、
ゲイリー・ウィルメス、
リザ・J・ベネット、
それでも恋するバルセロナ」のキャリー・プレストン、
コーリー・ジャクソン、
クレア・ヴァン・ダー・ブーム共演。

原題「5 FLIGHTS UP」
2014年 制作。