おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ファントム 開戦前夜

朝の晴れ間はどこへやら。
時間と共に雲に覆われ空が暗くなってきた。
近頃の雨ときたらバケツをひっくりかえしたような土砂降りが多い。
昨日に引き続き不安定な空模様の一日。

映画「ファントム 開戦前夜」を観た。

キューバ危機では米ソの核戦争は回避されたが、1968年5月。
ソ連の核搭載潜水艦が消えた時、世界は再び核戦争突入の危機を迎えようとしていた。
そんな前置きから物語は幕を開ける。

ここはソビエトの極東に位置する海軍ルイバチー潜水艦基地。
レーニンの肖像を掲げた司令官室をベテランの老艦長が訪れた。
長い航海から帰還したばかり。
しかも転属を希望していた彼に、司令官は新たな指令を下す。

それは艦隊本部からの指令だという。
中国海軍に売却する予定の既に退役した旧型艦B-67を使った偵察航海だった。

B-67は老艦長が乗った最初の潜水艦だ。
さぞ懐かしい艦だろう。
・・・いや、そうでもないようだ。
売るくらいなら、いっそ深海に沈めてしまった方がいいのでは。
老艦長にそこまで言わしめる、なにやらいわくありげな艦らしい。

さて、こうして部下たちを集め慌しく出航準備に取り掛かる。
KGBの技術者が試作装置の実験のため同行するという。

さっそく乗組員リストを持参して報告にやってきた副官が、気がかりな点について触れた。
老艦長の部下以外の補充兵の個人情報がないという。
いずれも他の艦で死亡者リストに名を連ねている面々だというのだ。
なんて胡散臭い連中だろう。

しかも、夜の港を出てゆく艦を見送った司令官はそのまま自殺を図る。
のっけから不吉だ。
とんでもなく不吉だ。

やがて彼らは、太平洋上に展開する米軍艦隊の潜水艦に出くわした。
こちらの音をすかさずキャッチし、ずんずん近づいてくる米軍艦。
撃って来るのかッ!?
すわ、開戦かッ!?
ところが米軍艦はプイッと方向転換し去ってゆくではないか。

例のKGBの実験装置が功を奏したようだ。
装置の名はファントム。
潜水艦の音をあらゆる船に偽装することができ、ソナーから見えなくしてしまう恐るべき装置だった。

米軍艦が探知できないなら味方も探知不能
それはつまり任務を放棄し、核ミサイルを積んだ艦を使い身元のバレないテロ行為が可能になってしまうということだ。

もともと不穏だった艦内の空気が、一段と増してゆくのを彼らは感じていた。

物語は、冷戦時に南太平洋で行方不明になったソ連の核搭載潜水艦の真実に迫るサスペンス。

さて潜水艦の行方はいかに。
そして、この艦で起こった過去の忌々しい出来事とは何か。

のっけから続く不穏な空気とえも言われぬ緊張感。
そして深海の狭い閉鎖空間もあいまって観ているこちらまで息苦しさを覚える。

もしもあの時、核ミサイルが発射されていたら今の世界は無かったかもしれない。
政治とは一線を画する海軍の矜持を滲ませつつ、歴史の大きな分岐点を知る一作。

フラッシュバックのように訪れる主人公の謎めいた回想が、過去と現在と未来を織り交ぜた、時間の概念のない死後の世界から覗いた描写だということに後になって気づいた。

ただ、米国の個人主義を礼賛している点がやや鼻に付く。
ソ連のみならず、どこの国家も全体主義に変わりはないはず。

「疑わしき戦い」のエド・ハリス
ランス・ヘンリクセン
ドライブ・アングリー」のウィリアム・フィクトナー
「ザ・ヘラクレス」ジョナサン・シェック、
X-ファイル」のデヴィッド・ドゥカヴニー
デレク・マジャール
ジョーダン・ブリッジス、
ジェイソン・ベギー、
ジェイソン・グレイ・スタンフォード
ショーン・パトリック・フラナリー共演。

原題「PHANTOM」
2013年 制作。