おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ラスト・クライム 華麗なる復讐

穏やかな晴天の一日。
台風から二週間。
タンカーが突っ込み不通になっていた関空の鉄道橋が本日から運行を始めたようだ。
どうやってあれを修復するというのか。
あまりの破壊規模に茫然としていた我々をよそに、着々と作業計画を立て采配をしたものすごく頭の切れる人々の存在に驚く。

映画「ラスト・クライム 華麗なる復讐」を観た。

ここはスペインのコンサートホール。
厳重な管理下に置かれているバイオリンが首席奏者に手渡されると、いよいよオーケストラの演奏が始まる。

おや?
静まり返った会場に、調子っ外れたバイオリンが鳴り響くではないか。
訝しむ観客。
次の瞬間、会場の明かりが一斉に落ちた。

暗闇に紛れてバイオリンを抱え一目散に逃げ出す首席奏者。
何とこいつは首席奏者に扮した真っ赤なニセモノ。
そんな、名器ストラディバリウスを公衆の面前でかっさらう大胆な強盗劇から物語は幕を開ける。

物事には計画、準備、正確性が重要だという。
彼は、この道数十年のベテラン強盗。
今回も用意周到に完璧な仕事をこなしたはずだった。
ところがどうしたことだ。
組んだ仲間にあっさりと裏切られ、彼は暗く冷たい水底に沈められてしまうのだった。

さて、ところ変わってジュネーブの弁護士事務所を二人の女が訪れた。
ひとりはユーロポールに追われるセクシーな女スリ師。
もうひとりはドジなメガネっ娘のITエンジニア。
共に父死亡の連絡を受け遺産相続の手続きにやってきた。
タイプのまるで違う彼女たちだが、親父は冒頭の強盗で腹違いの姉妹に当たるという。

彼女たちはこれまで互いの存在すら知らなかった。
家にも帰らず、養育費も寄越さなかったクソ親父。
しかも遺産といえるようなカネもなく、スキーリゾートのクーシュベルに別荘があるだけだという。

悪態をつきながら、金目のモノをかっさらおうと山奥の別荘へ向かった娘たち。
なんとそこでは、死んだはずの親父が娘たちの到着をしれっと待っていたではないか。
しかも、残りの人生で家族の溝を埋めたいなどと抜かしやがる。

親父が最後の仕事で手に入れるはずだった1500万ユーロのストラディバリウス。
娘たちに、奪われたこの遺産を取り返す手伝いをして欲しいというのだ。
親父のこたあどうでもいいが1500万ユーロは魅力的。

近く行われるストラディバリウスの闇取り引きのため、クーシュベルのホテルに親父を裏切りストラディバリウスを持ち逃げした冷酷な男がやってくる。
その取り引きの瞬間を狙って、男の口座から報酬をそっくり盗み出す計画なのだという。

こうして相続する遺産のためとはいえ親父の復讐ともいえる仕事を手伝うことになった娘たち。
果たしてその顛末はいかに。

物語は、親父とその娘たちの強盗計画を、騙し騙される危うい恋模様をからめて描いたコミカルなクライムロマンス。

つかの間の家族愛にささやかな喜びを見出す一方で、用意周到な親父の仕事振りが彼女たちの疑心に揺さぶりを掛けてくる。
強盗稼業の親父は娘たちまで騙そうとしているのだろうか。
それとも・・・。

台詞に奥行きもなく、さほど捻りのない安直な展開。
脚本の足りない部分を役者の魅力でカバーしている印象。

見どころは、悩ましげな眼差しのパスカル・ドゥモロンだろうか。
観客は、この危ういにおいを漂わせた男から口説かれる疑似体験をすることができる。
その声のトーン、大人の男の色気に思わずニヤニヤしてしまう乙女向けの一作。

「ザ・スクワッド」のジャン・レノ
リーム・ケリシ、
カミーユ・シャムー、
パスカル・ドゥモロン、
アレクシス・ミシャリク、
ブルーノ・サンチェス、
ナタリア・ベルベケ、
モリー・カザル共演。

原題「MES TRESORS」
2017年 フランス制作。