おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ブルックリン

店頭に柿や梨だけでなく新物のりんごが並び始めた。
秋雨前線に伴ってここしばらくすっきりしない空模様が続いている。
今日もどんより曇り空の一日。

映画「ブルックリン」を観た。

時は50年代初頭。
通りに街灯が点る、まだ夜も明けぬアイルランドの田舎町。
そそくさと家を後にする若い娘がいる。
町の食料品店に勤める彼女は、あくびを噛み殺しながら女店主らと共に早朝の礼拝に向かう。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

ひと足先に礼拝を済ませ店の準備を整えた頃、日曜のミサを終えた客がどっと押し寄せてくる。
店は大繁盛。
しかし彼女は、支配的で客の足元を見るような底意地の悪いここの女店主が嫌いだ。
ここで働きたいわけじゃないが、田舎町には彼女が望むような仕事が無かった。

そこで向上心のある彼女は一大決心。
知り合いの神父のツテを頼り、老いた母と姉を残してひとり米国へ旅立つ。

船旅など初めてで要領すら分からない。
それでも面倒見の良い同郷の姐さんに助けられながら大西洋の荒波を潜り抜け、ようやくニューヨークの地に降り立った。

こうしてアイルランド移民が多いブルックリンの女子寮に身を寄せデパート店員として働き始める。
ところが、真面目で物静かな彼女は接客が苦手。
華やかな職場に相応しい、気の利いた会話が出来ないのだ。
挫折感と姉から届く手紙がホームシックに輪を掛ける。

こんなはずじゃなかった。

そんな時、同郷のコミュニティは心強い。
より合った仕事に就けるようにと、彼女を気遣う神父の提案で夜間大学に通い簿記を学ぶことになった。
失っていた自信を取り戻し、にわかに輝きを帯び始めた彼女。
素敵な恋人との出会いにも恵まれ、希望に満ちあふれた充実の日々を送っていた。

そんな矢先の出来事じゃった。
なんということだろう。
故郷から羽ばたいていった妹の幸せをまるで我が事のように喜んでいた姉が、突然命を絶ってしまうではないか。

訃報を受け悲しみに暮れる彼女は、将来を誓い合った恋人につかの間の別れを告げると、姉を弔うため故郷アイルランドに舞い戻るのだった。

物語は、自立を夢見て単身米国へ渡った若きアイルランド人女性の視点で、望郷の思いを綴ってゆくヒューマンドラマ。

故郷が嫌で新天地を目指したはずなのに、紆余曲折を経て再び故郷に戻ってみれば、住んでいた当時は知りえなかった故郷の魅力に気づかされる。
故郷を離れた者なら誰しも思い当たる節があるかもしれない。

都会への憧れと故郷を離れる苦しみを抱えたヒロインの葛藤。
そして命を絶った姉や、底意地の悪い女店主が抱える故郷を離れられない苦しみもまた胸を打つ。

ヒロインの体験を通して、人を縛り付ける心の原風景ともいえる故郷にふと思いを馳せる。
これから進学や就職で住み慣れた町を離れる若い娘さんにお勧めの一作。

「ザ・ホスト 美しき侵略者」のシアーシャ・ローナン
フィオナ・グラスコット、
ジェーン・ブレナン、
「マダム・フローレンス! 夢見るふたり 」のブリッド・ブレナン、
エヴァ・バーシッスル、
ハリー・ポッター」のジュリー・ウォルターズ
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のジム・ブロードベント
エミリー・ベット・リッカーズ、
イブ・マックリン、
「ヴィジット 消された過去」のノラ・ジェーン・ヌーン、
メアリー・オドリスコール、
サマンサ・マンロー、
エモリー・コーエン
エクス・マキナ」のドーナル・グリーソン共演。

原題「BROOKLYN」
2015年 イギリス、カナダ制作。