おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

レジェンド 狂気の美学

路地に屋根のスレートを葺く大工たちのリズミカルな音が響き、公園の痛ましい倒木も徐々に片づけが進められている。
これから雨になるという。
すっかり秋の空気になった、やや肌寒い曇り空の一日。

映画「レジェンド 狂気の美学」を観た。

時は60年代。
ロンドンの下町イーストエンドにて、ダークスーツに身を包み、車で張り込み中の刑事に紅茶を振舞う粋な男がいる。
刑事がマークする彼の名はレジナルド・クレイ。
双子の弟ロナルド・クレイと共にイーストエンドを支配する若きギャングである。

敵対組織を押さえ、クラブやカジノの経営から麻薬取り引きといった手広い商売で、今やロンドンの闇社会を支配下に置く勢いだ。

さて、同じくイーストエンドに速記を学ぶ女子大生の娘がいる。
ちょうど兄がこのギャングの雇われ運転手をしていた縁で、彼女はレジナルドに出会う。
たちまち彼は一目惚れ。

おれはギャングじゃないよ。
クラブオーナーさ。

出まかせをいう彼であるが、有名人らが集う洒落たクラブで丁重にもてなされるサプライズに女は弱い。
自分をどこか遠い世界に連れ出してくれるような、若き実業家風情の優しい男にすっかり夢中になってしまった。

しかし、モノは言いようで人気のクラブをカネと暴力で脅し取るのが彼の仕事の流儀。
でも、彼女と過ごしていると、なんとなくカタギの経営者でいられるような気がした。

ところが、ギャングに安息の日々などない。
精神病質な双子の弟の存在が兄の足を引っ張る。
凶暴で破壊衝動に歯止めが利かない弟。
商売で成功を収める兄に対する妬みからたびたび事件を起こし、彼はその尻拭いを余儀なくされてゆくのだった。

物語は、60年代ロンドンの闇社会を支配した双子のギャング、クレイ兄弟の人となりに迫るクライムストーリー。

男の人生に振り回される兎にも角にも依存心の強い女が語り部役となり、愛すればこそ憎いという複雑な兄弟間の感情を浮かび上がらせてゆく。

正気と狂気の境目はどこにあるのだろう。
我々は皆、信仰や薬物、また家族といった、心の拠り所によって辛うじて正気を保てている危うい存在なのかもしれない。

よくあるギャングの日常で、決して引きが強いとはいえない地味なストーリー展開。
レトロな時代の雰囲気と、トム・ハーディがまるで異なる双子を巧に演じ分けている姿が見どころか。
ギャング映画にしては残酷な描写が控えめで、女性でも安心して観ていられるつくり。

欲望のバージニア」のトム・ハーディ
ゴーストシップ」のエミリー・ブラウニング
28日後...」のクリストファー・エクルストン
「白鯨との闘い」のポール・アンダーソン、
ワンダーウーマン」のデヴィッド・シューリス
キングスマン」のタロン・エガートン
チャーリー・パーマー・ロズウェル
ディファイアンス」のサム・スプルエル、
ユージュアル・サスペクツ」のチャズ・パルミンテリ共演。

原題「LEGEND」
2015年 イギリス、フランス、アメリカ制作。
R-15+