おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

バニー・レークは行方不明

久しぶりに清々しい青空が広がる一日。
再び大きな台風が近づいているという。
ついこの間の経験から恐怖が蘇ってくる。
何事もなく過ぎ去ればよいのだけれど。

映画「バニー・レークは行方不明」を観た。

ここはブランコやトランポリンが並ぶ屋敷の裏庭。
おや?
ここの家の子が落としたのかな。
くまのぬいぐるみが転がっているよ。
男はそれを無造作に拾い上げるとカバンの中に押し込んだ。

屋敷の家具にはいずれもカバーがかけられている。
どうやらここの一家は引越しをするらしい。
人夫たちが荷物を運び出し、男は門に施錠して屋敷を後にした。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

さて、仕事で忙しい夫に代わって新居のアパートで引越しの荷物を引き受ける女がいる。
人夫たちに指示しながら慌しく搬入を終えると、片付けもそこそこに買い物を済ませる。
おっと、そろそろ保育園に預けた子供を迎えに行かなくては。

こうして今朝入園させたばかりの保育園に向かった彼女。
ところがどうしたことだろう。
預けたはずの我が子がいない。

きっとどこかにいるわ。
すぐに見つかるわよ。

子供がいなくなったというのに保育園のスタッフは口々に無責任なことをいう。
挙句の果てに、お子さんはもう帰りました、だ。
なんという杜撰な保育園だろうか。
シンジラレナイ。

引越しで慌しくしていたせいもあってか、こんないいかげんなスタッフの言葉を信じ、担当教員の面会をおろそかに預けてしまったことが今更ながら悔やまれる。

埒が明かず冒頭に登場した夫や警察が呼ばれ、ほどなく事態は失踪事件に発展した。
失踪したのは4歳の女児バニー。
女はシングルマザーで、夫と思われた男は共に暮らす彼女の兄だという。

女と娘は、数日前にジャーナリストの兄を頼って米国からこのロンドンにやってきたばかり。
事件は仮住まいの屋敷から新居のアパートに引越す混乱の中での出来事じゃった。

捜索にあたる一方で、丹念に事情聴取を重ねるベテラン警視は、この兄妹に違和感を感じた。
兄は妹を気遣うが、姪の失踪を気にかけている様子がまるでみられない。
しかも兄いわく、妹は子供の頃、空想上の友達にバニーという名前をつけていたというではないか。
それを裏付けるかのように、保育園に子供を預けた記録はなく、アパートにあるはずの女児の身の回りの品も見つからない。

果たしてバニーはこの世に存在し、失踪してしまったのか。
それとも全ては女の妄想なのだろうか。

物語は、ロンドンの保育園から失踪した米国人女児を巡るミステリー。

話を遮ってはっきりと自己主張をしないため、ずるずると他人の話に流されてしまうヒロインにだいぶヤキモキさせられる。
大事な我が子のことなのに他人の判断に委ねてしまったり、アパートに侵入してきた近所の酔っ払いを追い払うことすら出来ない。
守ってやりたくなるような気の弱い女はおそらく男性の好みとするところなのだろうが、母ちゃんしっかりしろよ!と思わず引っぱたいてやりたくなる。
前半はハラハラというよりイライラの度合いが高い。

後半からは一転して予想だにしなかった急展開が待ち受けており、観る者を引き込む。
真実は紙一枚隔てたところに隠れている。
指で引きちぎられた黒い紙の下からスタッフロールが現れるモノクロームを生かしたオープニングロールは、まるで大切なものを見落とすなよと我々に警告しているかのよう。
観客の思い込みを逆手に取った見事なミステリーだった。

ポセイドン・アドベンチャー」のキャロル・リンレイ
グッド・シェパード」のキア・デュリア
ノエル・カワード
ブラジルから来た少年」のローレンス・オリヴィエ
追想」のマーティタ・ハント、
ルチー・マンハイム
アンナ・マッシー共演。

原題「BUNNY LAKE IS MISSING」
1965年 制作。
モノクローム