おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

朝晩冷え込むようになってきた。
爽やかな秋風吹く晴天の一日。
相次ぐ台風を体験し、この年になって初めて風の恐ろしさを知る。
眺望や採光、通風、デザイン性といった住宅を選ぶ上でのメリットと思われた判断基準が、全て裏目に出てしまった。
次は暴風というシチュエーションを想定し、もう少し慎重になろうと思う。

映画「夜」を観た。

ガラス張りの高層ビル外壁をメンテナンス用カーゴエレベーターがゆっくり降りてゆく。
目の前のガラスに映るのはすっかり近代的な街に生まれ変わったミラノ。
古い瀟洒な建物は次々と取り壊され、無味乾燥な高層ビルが建てられてゆく。
移ろいゆく時の変化は誰にも止めることが出来ない。
そんな映像から物語は幕を開ける。

ここはミラノの病院。
ある中年夫婦が入院している親友の見舞いにやってきた。
夫は今をときめく売れっ子作家。
公私ともに付き合いのある文芸評論家の友は末期がんに冒され、そう長くはないという。

人生後悔ばかりだよ。
何事においても中途半端だった。

友は悔やむ。
その言葉にいたたまれなくなった妻はひと足先に病室を後にした。

一方、夫は廊下に出たところで隣室の女に誘惑され、そのまま絡み合うようにベッドに倒れこんだ。

おいおい、命いくばくもない友に会いに来たのではなかったのか?
それがたとえどんな状況であろうとも、目の前にぶら下がったエサに食らいつかずにはいられないタイプだろうか。
呆れた野郎だ。

さて、友の言葉が頭から離れないのか、妻は思いつめた様子で旧市街地から廃墟が残る郊外へとあてもなく彷徨い始める。
それはまるで若かりし日の思い出を辿っているかのようだった。

物語は、ミラノに暮らす中年作家夫婦の一夜を追い、その複雑な胸中を読み解いてゆく。

新たな恋という刺激を追い求めることでスランプを脱しようとしている作家。
一方で妻は、裕福な生活や夢を捨て惚れた男に尽くす人生を歩んできたことを後悔し始める。
未来を見つめる夫と、過去を見つめる妻。
心すれ違い、もはや一緒にいる意味が見出せなくなってしまった、そんな二人を描き出してゆく。

残された時間の焦りと過ぎ去った時間の虚しさが、気だるい空気のように物語全体を覆っている。
台詞は少なく、二人を取り巻く状況をその表情や行動から読み解かねばならずとても難解。
人生の引き出しが乏しい観客には、ただ他人の憂いをダラダラと見せ付けられているようにしか映らず非常に退屈だ。
作品の美点を最後まで見出すことが出来なかった。
残念。

「白夜」のマルチェロ・マストロヤンニ
ニキータ」のジャンヌ・モロー
ベルンハルト・ヴィッキ、
マリア・ピア・ルジ、
ヴィンチェンツォ・ コルベッラ、
ジット・マグリーニ、
モニカ・ヴィッティ
ロージー・マッツァクラーティ共演。

原題「LA NOTTE」
1961年 イタリア、フランス制作。
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