おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

シリアル・ママ

台風が運ぶ湿度の高い風が吹く曇り空の一日。
度重なる台風にやられだいぶボロボロになってしまったフウセンカズラのカーテンに思いがけないお客さんがやってきた。
数匹のミツバチが小さな花から花へと器用に蜜を集めて回っている。
また来てくれるだろうか。
花が咲いているうちは今しばらくこのままにしておこう。

映画「シリアル・ママ」を観た。

時は1993年5月。
ここは手入れの行き届いた庭が美しい住宅。
歯科医の夫とその妻、息子、そして高校生の娘の4人家族が和やかな朝食を囲んでいる。

おや?
その時、一匹の蝿がチーズにとまった。
瞬間、ママの顔色がサッと変わる。

家族との会話は上の空、ハエたたきを手にハンターのような鋭い目つきでその動きを追う。
ようやく獲物を仕留めると、ママはいつもの和やかな笑顔に戻った。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

さて、そこへ二人の刑事が聞き込みにやってきた。
なんでも、卑猥な電話や郵便物に近所の夫人が悩まされているという。
とはいえ見るからに模範的なこの一家。
さすがに的外れやなと、苦笑いしつつ刑事たちは早々に引き上げて行った。

ところが、家を出る家族を見送った直後、ママは豹変する。
例の夫人にいたずら電話をかけ、レディーが口にするのも憚られる卑猥な台詞で罵倒するではないか。
それはまるで人格が入れ替わったかのよう。

事の始まりはスーパーの駐車場だった。
入ろうとした駐車スペースに例の夫人が強引に割り込んできたのだ。
どうやらママは、彼女の美しい世界を乱す人間が許せないようだ。

その午後、抑えきれない怒りの衝動を振り払うようにして、手作りのケーキを手土産にママは息子の学校へ二者面談にやってきた。

担当教師いわく、最近息子はホラー映画に傾倒し勉強に身が入っていないという。
家庭内に何か問題でもあるのではないか。
精神科で一度診てもえというのだ。

それを聞いたとたん、ママの目つきが変わった。
なんという無責任な教師。
生徒の問題に取り組む意欲がまるでないばかりか、模範的な母である自分にケチをつけるというのか。
教師もまた彼女の美しい世界を乱す人間のようだ。

こうして面談を終え車で待ち伏せするママは、担当教師が出てきたのを見計らい思い切りアクセルを踏み込むのだった。

家族さえ知らなかったママの素顔。
それは逆鱗に触れた人間を次々と襲う恐るべきシリアルキラーだった。
物語は、ボルチモアで起こった主婦による連続殺人事件の一部始終を追うブラックコメディ風サスペンス。

犠牲者はいずれも社会のルールを守らない人々で、彼女は自らの正義を信じてやまない。
彼女の存在は理不尽な社会を浄化する必要悪なのだろうか。
恐ろしいなと思う一方で不届き者に制裁が下る様子を待ち望んでしまう一作。

ヴァージン・スーサイズ」のキャスリーン・ターナー
華麗なるギャツビー」のサム・ウォーターストン
ファミリー・ツリー」のマシュー・リラード、
リッキー・レイク、
ウォルト・マクファーソン、
スコット・モーガン
ミンク・ストール
メアリー・ジョー・キャトレット、
パトリシア・ダンノック、
ジャスティン・ホーリン共演。

原題「SERIAL MOM」
1994年 制作。