おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

沈黙 サイレンス

予報によれば大阪は暴風圏から免れそうだ。
強い風吹く蒸し暑い一日。
風が強くなり今日は早々に引き揚げて行ったようだが、先日に引き続きミツバチの小隊が花粉と蜜を集めに来ていた。

映画「沈黙 サイレンス」を観た。

もうもうと煙る雲仙山麓に晒し首が並ぶ。
そこへ引っ立てられてきたのは4名の外国人修道士。
磔にされたされた彼らの身体に煮えたぎった熱水泉がかけられる。
イエズス会神父は、なすすべもなくそれを見守るしかない。
ゴルゴタの丘で磔にされたイエスよりも惨いのではないか。
そんな、地獄絵図のような拷問死の現場から物語は幕を開ける。

時は、江戸初期1640年。
マカオイエズス会に、オランダ貿易商によって日本から密かに運ばれた一通の書簡が届く。
差出人は冒頭の神父。
キリシタンの置かれた深刻な状況が綴られている。
布教が原因で数千人が殺害され、さらに多くの信徒が信仰を棄てているという。
日本のイエズス会はもはや壊滅状態だ。
そればかりではない。
人づてに聞いた話によれば、神父は棄教し日本人として暮らしているというではないか。

ありえへん。

彼を師と仰いできた二人の弟子には信じられないことだった。
このまま恩師を放ってはおけない。
彼の魂を救わねば。

二人の若き神父はこれを大いなる試練と受け止め、キリシタンにとって今や恐ろしく危険な暗黒の国へと変貌を遂げた日本へ旅立つ。

五島の漁師だったという日本人の案内役に伴われて密かに上陸した寒村は、幸いにも隠れキリシタンの村だった。
司祭が来てくれたことで村人は涙して喜び彼らを匿うが、長崎奉行 筑後守は密告を推奨し懸賞金をかけている。
一歩村の外に出れば誰が信用できるか分からない危険な状況だという。

しかし、彼らは秘跡を求める散り散りになった信者たちを救わねばならない。
そして何よりも恩師に会うという使命を果たさねばならない。
いつまでも村の炭焼き小屋に隠れ潜んでいるわけにはいかないのだった。

物語は、遠藤周作の「沈黙」をもとに、キリシタン弾圧の時代、日本へ渡った最後のイエズス会神父の苦悩を描いた歴史スペクタクル。

信仰とは何か。
物語を通して我々に問いかける。

死にゆく信徒らの祈りを、そして苦しみを聞いているはずなのに、神はなぜ沈黙を続けるのだろう。
なぜ何も答えてくださらないのか。
自分はこの国に救いどころか災いをもたらしてしまったのではないだろうか。
拷問死させられてゆく信徒の姿を目の当たりにし、神の存在を疑い、恐怖と絶望のあまり棄教せざるを得なかった恩師の苦悩。
善き人ゆえに耐えられない苦しみを、若き神父もまたその身をもって知る。
こうして神が沈黙するように、彼もまた心を閉ざし沈黙するのだ。

信仰に身を捧げる人々のひたむきさに心打たれる前半。
そして後半からは列強を恐れ、いかにして信仰を封じ込めるかという幕府側の焦りが伝わってくる。
ただ、布教の背景に侵略という思惑があったにせよ、これほどまでに惨い虐殺が行われる必要があったのだろうか。
国民ありきの政府ではなく、政府ありきの国民という点では今も昔も変わらないようだ。
我が国が辿ってきた歴史の黒い一幕に触れる、ずしりと重い一作。

「わたしを離さないで」のアンドリュー・ガーフィールド
「ミッドナイト・スペシャル」のアダム・ドライバー
ラン・オールナイト」のリーアム・ニーソン
「ロスト・エリア 真実と幻の出逢う森」のキアラン・ハインズ
窪塚洋介
笈田ヨシ
塚本晋也
江藤漢斉、
片桐はいり
イッセー尾形
菅田俊
浅野忠信
小松菜奈 共演。

原題「SILENCE」
2016年 アメリカ、イタリア、メキシコ制作。
PG-12