おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

パフューム ある人殺しの物語

朝晩の温度が20度を下回るようになり、熱帯性の植物の成長がだいぶ緩慢になってきた。
穏やかな秋晴れの一日。

映画「パフューム ある人殺しの物語」を観た。

牢獄の暗闇に溶け込むような男の影。
浮かび上がる鼻だけが、何か別の生物のようにひくひくと蠢いている。

そこへ看守らがやってきた。
鎖をはめられたまま慌しく外へ引っ立てられてゆく男。
広場を見下ろすバルコニーに彼が姿を現すと、それを見た群衆は口々に吊るせと叫ぶ。
判事によってそれはそれは恐ろしい判決文が読み上げられた。
男は香水調合師だという。
彼は一体どんな罪を犯したというのだろう。

時は18世紀、パリ。
泥でぐちゃぐちゃの通りを汚いボロを纏った人々がゾンビのように行き交う。
ああ、何もかもが汚いよ。
この時代の都会はむちゃくちゃ臭かったという。

中でも特に臭い掃き溜めのような魚市場で生を受けた彼は、なぜか稀にみる才能を持ち合わせていた。
それは人並み外れた嗅覚だった。

犬かよッ。

いやいや、犬どころじゃない。
あらゆるにおいを嗅ぎ分け、においだけで遥か遠く離れた空間まで認識することが出来た。

ああ、この世の全ての香りを知り尽くしたい。

成長に従いそんな欲求を抱くものの、生まれ落ちてすぐに捨てられスラムで皮なめし職人の奴隷として不遇の人生を歩む彼に自由はなく、ましてや才能を生かすチャンスなどあろうはずもない。

さて、そんな彼が初めて配達で街に出たときのことじゃった。
スラムとは違った香りに満ちた通りを夢見心地で歩いて行くうちに、ふとプラムを売り歩く娘の香りに吸い寄せられた。
それは今まで嗅いだことのない至福の香りだった。

鼻をすんすんさせながら背後の暗がりからそっと忍び寄る彼。
当然彼女は恐怖に叫ぶ。
それを夢中で押さえつけているうちに、とうとう彼女を窒息死させてしまったよ。

むはあ、この香りを永遠に閉じ込めたいッ。

でも彼はその術を知らない。
そこで香りを永遠に保存する方法を求め、配達先のイタリア人調香師に教えを請うのだった。

物語は、究極の行き着く先をテーマに、若い娘が持つ至福の香りを求めシリアルキラーになってゆく男を描いた残酷奇譚。

世の中のあらゆるものを香りでしか認識していない彼にとって、その命を奪う行為は草花を摘むのと同じ感覚だ。
それが良い事か悪い事かという認識はさらさらなく、あれも欲しい、これも欲しいと欲望の赴くままコレクションという名の凶行を重ねてゆく。

人間の罪は執着だ。
この執着が過ぎると大抵ロクなことにならない。

彼が辿り着いた究極の香りとは。
そして、この世に愛されなかった彼が、それによって得た究極の愛とは何か。
香りを抽出する過程を含めてすさまじくグロテスクな一作。

「白鯨との闘い」のベン・ウィショー
ヒトラー 最期の12日間」のビルギット・ミニヒマイアー、
サム・ダグラス、
カロリーネ・ヘルフルト
シェフ 三ツ星フードトラック始めました」のダスティン・ホフマン
コリンナ・ハルフォーフ、
パウル・ベロンド、
ヴェルサイユの宮廷庭師」のアラン・リックマン
「ドリアン・グレイ」のレイチェル・ハード・ウッド、
サイモン・チャンドラー、
「アラビアの女王 愛と宿命の日々」のデヴィッド・コールダー共演。

原題「PERFUME:THE STORY OF A MURDERER」
2006年 ドイツ、フランス、スペイン制作。
PG-12