おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

アウトロー

曇りがちで薄日の差す一日。
気が付けば十月も半ば。
空気がだいぶ冷たくなり羽織り物が必要になってきた。

映画「アウトロー」を観た。

ファインダーを覗くように狭くなった視野には、クラブをハシゴし酒をあおってケンカ騒ぎにまで発展する様子が映し出される。
そんなどうしようもねえ泥酔男の視点から物語は幕を開ける。

時は1999年。
レイキャビクの留置場で男は目覚めた。
冴えない大学生の彼は酔ってしたたかに暴れ、このたび暴行罪で起訴されることになってしまった。
罪は重く禁固5年のうえ慰謝料の支払いも免れられないという。
ああ、故郷の母ちゃんになんて言えばいいんだ。
経歴に傷は付くし、カネもないし万事休すだ。

彼は留置場の外で、偶然にも幼馴染に出会った。
身体のあちこちに墨が入った屈強なワルって感じの幼馴染だ。
麻薬と暴力の元締めをしているこいつが、幼馴染のよしみでいい弁護士を紹介してくれるという。

その代わりといっては何だが、幼馴染は彼にある仕事を持ちかけてきた。
ガサ入れの入ったアパートの一室から、警察も見つけられなかったブツを探し出して欲しいというのだ。

なあ、「ゼロの瞬間」って知ってるか?

アパートに彼を送り出す直前、幼馴染はぽつりとつぶやいた。
それは究極の状況に陥った時に訪れる瞬間だという。
まず冷静になること。
そして最初に頭に浮かんだことを何も考えずにやることだという。

彼には正直、何のことかよく分からなかった。
さて、こうして警察によって封印がなされたアパートの一室に彼は忍び込む。
散々引っ掻き回された後のようで、それはそれはひどい荒れようだ。
手付かずの所を手当たり次第に探すことひとしきり。

おっ、ビンゴ!

葉っぱの塊をようやく見つけ出した時のことじゃった。
突然ドアをぶち破り、バットを振りかぶった大男が襲い掛かってくるではないか。

ひぃぃぃいい、殺られるッ!

それは彼にとって初めてのゼロの瞬間であった。

物語は、ゼロの瞬間を迎え、サイコ野郎とあだ名されるようになった男の経緯に迫るクライムバイオレンス。

平凡な大学生が一線を越え、麻薬密売組織の構成員になってゆく姿が描かれる。
それは学業の合間のちょいと割のいいアルバイトだった。
麻薬に酒に女という甘い誘惑に逆らえず、犯罪という感覚も希薄なまま、彼は幼馴染のネットワークビジネスにのめりこんでゆく。

でもね、悪いことをやっていると、更なる悪い奴が群がってくる。
安易に一線を越えてしまった彼は、いつしかカタギの生活に後戻りできないほどの組織犯罪に巻き込まれてゆくのだ。

一度手を染めれば死ぬまで抜けられないということに気づかないのが、世間知らずな若造たるがゆえの浅はかさか。
都合のいい使い捨てを手ぐすね引いて待ち構えている組織犯罪の入り口を知る一作。

ソール・クリスチャンソン、
ヨハンネス・ハウクル・ヨハネッソン、
マリア・ビルタ・ビャルナドッティル、
エギル・エイナースソン、
ヴィクニル・ラフン・ヴァルソルソン、
スロストゥル・レオ・グンナルソン、
デイモン・ヤンガー共演。

原題「SVARTUR A LEIK」
2013年 アイスランド制作。
R-15+