おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ブルゴーニュで会いましょう

ぽかぽかと暖かい日差しの一日。
信号待ちの間、いつも日傘代わりになってくれるハクモクレンの葉も黄色く枯れ落ち始めている。
おや?
枝先にはちょこんと来年のつぼみが付いているようだ。
ハクモクレンはひと足早くもう春の準備をしているみたい。

映画「ブルゴーニュで会いましょう」を観た。

丘陵に沿ってブドウ畑がどこまでも広がる。
そんな美しいブルゴーニュの風景から物語は幕を開ける。

ここにワインのテイスティングをする男がいる。
膨大な数のフランスワインをひとつひとつ20点満点で的確に評価してゆく。
彼は名の知れたワイン評論家だ。

ブルゴーニュでワイン農家の息子として生まれた彼は、20歳で家を飛び出しここパリにやってきて15年。
天性の繊細な舌を生かしたフランスワインのガイド本で大成功を収めている。

彼のガイド本がその年のワインの売り上げを大きく左右するものだから、今をときめく業界人として講演会やらセミナーにひっぱりだこだ。

さて、そんな彼に地元に住む妹から連絡が入った。
実家のワイナリーがえらいことになっている。
兄さん今まで自由気ままに生きてきたのだから、こんな時くらい助けてーな。

実家は革命以来続く歴史あるワイナリー。
醸造家だった先代から引き継いだ親父が経営してきたが、もう長いこといいワインが造れず在庫が捌けない。
負債はかさむ一方で、このたび裁判所から差し押さえを受けてしまった。
このままでは買収手続きが進められてしまう。
ただし、再建を担う責任者を提示すれば、会社更生法に則り一年間の猶予が与えられるという。
親父に代わって経営の舵取りをする人材が求められているのだ。

家業は継がなかったが、彼は今でもワインに携わる仕事をしている。
畑づくりについて熱く語っていた亡きじいちゃんの思い出がふと蘇った。
やっぱりここが自分の原点だったのかも。
じいちゃんのブドウ畑が人手に渡ってもいいのか?
腹をくくった彼は、パリの生活を捨て再建に携わる決意をする。

ところがね、再建のため実家に戻ってびっくりよ。
離婚以来すっかりやる気をなくした親父は、現実逃避するかのように釣りに没頭する毎日。
ブドウ畑は経験の浅い妹の夫に丸投げ状態ではないか。
こりゃいいワインなど造れるはずがない。

もはや親父はあてにならない。
とはいえ、今までと同じ造り方ではダメだ。
上等なワインを造るにはどうしたらいい?
彼は、自分なりのやり方を模索し始めるのだった。

物語はブルゴーニュの四季を背景に、ワイン農家の再建と家族の再生を描いたヒューマンドラマ。

ものづくりの情熱はどこから生まれてくるのだろう。
それは土地に根ざした先人たちの思い、そして家族の絆にあると物語はいう。

自然の脅威に翻弄されながら試行錯誤を重ね、ワイン造りに人生をかけるブドウ農家の熱い思いに触れる。

人の感情は複雑でそう簡単にはわりきれない。
そんな様々な感情入り混じる登場人物の描写や場面作りが実に見事だ。
作り手のセンスを感じる一作。

ジャリル・レスペール、
ムッシュ・カステラの恋」のジェラール・ランヴァン、
イヴ・サンローラン」のローラ・スメット、
ラニック・ゴートリー、
クリスチャン・ミレ、
アリス・タグリオーニ
フレデリック・ティルモン共演。

原題「PREMIERS CRUS」
2015年 フランス制作。