おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ダーク・プレイス

朝からやや曇りがち。
このところ連日のように冷たい風が吹くようになった。
映画「パージ」を思い出さずにはいられないハロウィンの一日。

映画「ダーク・プレイス」を観た。

それは1985年の夜更けのこと。
姉たちと眠る子供部屋を抜け出し母のベッドに潜り込む幼い少女。
ほの暗い闇の中、我が子をまっすぐ見つめながら母はささやく。

愛してるわ。
絶対に忘れないで。

それが母との最期になってしまった。
なぜ母は、あんな事を言ったのだろう。
そんな幼き日の断片的な記憶から物語は幕を開ける。

ここに、荒れ放題の家に住むやさぐれた中年女がいる。
彼女は8歳の時に母と二人の姉を殺され一躍有名になった。
カンザス一家惨殺事件の遺児だ。

物証に乏しい中、生き残りである彼女のあいまいな証言から、悪魔崇拝に傾倒していた中学生の兄が犯人とされた。

こうして遺児となった彼女には全国から同情と多額の寄付金が寄せられる。
おかげで彼女はこの年になるまで働いたことがない。
ところが、この寄付金もとうとう底を尽いてしまい自動車の修理代金にも事欠く始末。

あれから28年。
再び寄付金を募ったところで事件は人々の記憶から忘れ去られている。
それに何より彼女はもういい大人ではないか。
いつまでも他人の善意につけ込んだ生活を続けるとは情けない。

さて、そんな生活苦にあえぐ彼女に、ある青年がコンタクトを取ってきた。
彼が所属する、殺人に興味のある者たちが集うクラブの会合に出て欲しいというのだ。
ああ、なんて趣味の悪い連中だろう。
犯罪者予備軍かよ。

しかし背に腹は変えられない。
彼女は謝礼のカネを目当てに、のこのこと会合に出かける。
確かに殺人事件を楽しむタチの悪い連中も混じっているが、中心メンバーは元刑事や探偵、調査官、弁護士からなる、未解決事件を解明することを目的とした真面目なクラブだという。

しかも彼らは、事件の犯人とされた彼女の兄の釈放のために活動しているというではないか。
ところが、このたび役所の経費削減のため10年以上前の証拠品がごっそり破棄されることになってしまった。
リミットは3週間。

それまでに無実を裏付ける新たな証拠が欲しい。
生き残りである彼女の記憶だけが唯一の手がかりだというのだ。

しかし、彼女にとっちゃ思い出したくもない出来事。
怒りをあらわにして踵を返そうとした彼女。
そこでメンバーの女性が発したある言葉が胸に突き刺さった。

だらしない嘘つき女!

そうなのだ。
あの夜何が起こったのか分からないまま、ひたすら過去から逃げてきただけではないのか。
このままでいいのか自分。

こうして彼女は青年に協力し、呪いのように人生を蝕み続けた過去と向き合う決意をするのだった。

あの夜、彼女は何を見たのだろうか。
物語は償いをテーマに、当事者の記憶を辿り、28年前カンザスの牧場で起こった一家惨殺事件の真相に迫ってゆくミステリー。

人生を奪った過去と対峙し、新たな一歩を踏み出そうとする女性の姿が描かれる。

子供たちがついたささやかな嘘。
若者が傾倒する反社会的なファッションとしての悪魔崇拝
地方にはびこる麻薬汚染。
牧場経営の行き詰り。
そんないくつもの要素が絡み合うことで平凡な日常が破綻し、忌まわしい死を呼び寄せてしまう。
運命のいたずらとでもいうのだろうか。
全てが、あの夜を収束点とする最悪の結末に向かって突き進んでゆくかのようだ。

惨劇は決して特別なものではないようだ。
我々の日常もまた、ひとつ間違えばその惨劇に転がる可能性を秘めているのかも。

今回も期待を裏切らない。
シャーリーズ・セロンのファンには嬉しい一作。

「プロメテウス」のシャーリーズ・セロン
ウォーム・ボディーズ」のニコラス・ホルト
「ゴールド/金塊の行方」のコリー・ストール、
ネオン・デーモン」のクリスティーナ・ヘンドリックス、
「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」のスターリング・ジェリンズ、
「ゾンビーワールドへようこそ」のタイ・シェリダン、
「フィフス・ウェイブ」のクロエ・グレース・モレッツ
「砂上の法廷」のショーン・ブリジャース、
死霊館」のシャノン・クック共演。

原題「DARK PLACES」
2015年 イギリス、フランス、アメリカ制作。
PG-12