おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

キル・ユア・ダーリン

ぽかぽかと日差し暖かな一日。
植木鉢のダイモンジソウが花開いた。
昨年は淡いピンクの花びらだったようにおもうが、今年はピンクが濃いようだ。

映画「キル・ユア・ダーリン」を観た。

返り血を浴びた美しい青年が、水面に横たわる男を抱きかかえている。
見開かれた男の目に宿るのは恐怖だろうか。
それとも・・・。
さながらクリスチャンの洗礼式のような謎めいたシーンから物語は幕を開ける。

ヨーロッパのそしてアフリカの戦況を日々ラジオが伝える、時は第二次世界大戦末期の1943年。
ここニュージャージー州パターソンに、詩人の父と共に精神を病んだ母の介護をしながら暮らすユダヤ人青年がいる。

母を見捨てるつもりはないが、家にひきこもっているのは退屈だ。
同世代の若者たちと学び刺激を受けたい。
こうして両親に内緒でコロンビア大の入試を受けた彼に、このたび合格通知が届いた。

期待を胸にコロンビア大の門をくぐった彼であったが、押韻、韻律、隠喩を踏まえた伝統的な型を重視する授業は思いのほか退屈だった。

さて、皆がパーティに出払い静まり返った大学寮に、ふとブラームスの音色が響く。
音に誘われるように立ち入った部屋にそいつはいた。

静まり返った聖堂のような図書館でヘンリー・ミラーの卑猥な詩の一節を朗読し、その場の空気を一瞬にして凍らせた破天荒な男だ。
その美貌と型破りな振る舞いに、彼はたちまち惹かれた。

法を破ることは非凡な人間の義務である。
そう語る破天荒男は、青年を退廃ムード漂う文学サロンに連れ込んだ。
そこに入り浸る仲間とつるみ、伝統をぶち壊す文学革命を起こそうというのだ。
まあ、検閲だらけだった社会に対する若者の反発だ。

こうして彼らは、イェイツの「幻想録」から拝借した「新幻想派」を名乗り、授業そっちのけでイタズラまがいのテロ活動に興じるようになる。

でも、文学派閥を名乗るからには代表作がないとダメだ。
そこで破天荒男は自ら書かず、言葉巧みに青年を焚きつけては執筆をせがむ。

青年は書くのが得意だったし、何より美しい男から求められて悪い気はしない。
こうして彼は、この気まぐれで人の心を操ることに長けた破天荒男に振り回されてゆくのだった。

アレン・ギンズバーグウィリアム・バロウズジャック・ケルアック
青春の日々を共に過ごしたこれら文人たちに大きな影響を与えた男がいた。
彼の名は、ルシアン・カー。
物語は、この美貌を武器に他人を翻弄する男が引き起こしたある事件に迫ってゆくヒューマンドラマ。

美しいサイコパス野郎と共依存に陥り、果ては痴情のもつれから崩壊してゆく女々しい男たちの姿を描き出す。
見ているうちに、ゴールデンボンバーの代表曲が頭の中でリピートを始める。

反道徳的な表現や同性愛が禁じられていた世相に反発するように、それっぽい言葉をこねくり回して粋がっている彼らの姿が幼く映る。
戦地に赴くことなく、暖かいベッドと三度の飯にありつけて学業にも専念できる。
いいご身分ではないか。
これ以上何を望むというのだろう。
大人には理解しがたい、まるで熱病にかかったような若気の至りに触れる一作。

「ヴィクター・フランケンシュタイン」のダニエル・ラドクリフ
デヴィッド・クロス、
モーガン プロトタイプL-9」のジェニファー・ジェイソン・リー
「キュア 禁断の隔離病棟」のデイン・デハーン
ウォークラフト」のベン・フォスター
「GAMER」のマイケル・C・ホール
高慢と偏見とゾンビ」のジャック・ヒューストン、
デヴィッド・ラッシュ、
「ポゼッション」のキーラ・セジウィック
「アイ・ソー・ザ・ライト」のエリザベス・オルセン共演。

原題「KILL YOUR DARLINGS」
2013年 制作。
PG-12