おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

トスカーナの休日

朝から穏やかな晴天の一日。
いつの間にやらカランコエがたくさんの花芽を付けていた。
寒風のベランダに置きっぱなしで開花を遅らせてしまった去年の反省を踏まえ、今年は早めに取り込むことにしよう。

映画「トスカーナの休日」を観た。

彼女の書評が新作を生み出すきっかけをくれました。

若手作家たちが口々に謝辞を述べる中年女性がいる。
自身も作家であるが、最近はもっぱら書評ばかり書き、彼女なりに作家として芽の出ない夫を支えてきたつもりだった。

ところが、そんな夫が浮気を理由に別れを切り出してきたではないか。
仕事も家庭もうまくいっていると思っていた彼女にとって、それは青天の霹靂だった。

ついては浮気相手と暮らしたいので、離婚手当として家を明け渡せという。
まったく理不尽な話であるが、彼女が家計を支えてきたので法律上、身銭を切るようなカタチで家を明け渡すよりほか仕方がない。

傷心のうえ、家まで失ってしまったよ。
泣きっ面に蜂だ。
これからどうしたらいいのだろう。

落ち込む彼女に、親友がイタリア旅行のチケットを譲ってくれた。

そうね、過去を振り返ってばかりじゃだめ。
新しい人生に向かって踏み出さなくては。

さあ、こうしてツアーバスは花の都フィレンツェを巡り、コルトーナの町にやってきた。
古い石畳の小道が続く街を散策するうちに、ふと美しい広告に目が止まる。
ブラマソーレと書かれたヴィラが売りに出されているようだ。

廃屋だけど修理できるわよ。

おや、先ほど市場で子供のようにアヒルの赤ちゃんと戯れていた艶やかなマダムではないか。

憧れるけれどツアーで立ち寄っただけだし、こんな大きな買い物無謀だわ。

うふふ。でも、無謀って・・・素敵。

しり込みする彼女に、マダムは意味ありげな微笑みと台詞を残して去ってゆく。
ああ、これは天啓かもしれない。

こうして彼女はマダムの言葉に背を押され、なけなしの全財産をこのヴィラにつぎ込む決意をするのだった。
果てさて、遠く異国の地で、築300年になる貴族の屋敷を衝動買いしてしまった彼女の運命のほどはいかに。

物語は、人生の再起を図りトスカーナ暮らしを始めた女流作家の紆余曲折を描くヒューマンドラマ。

長期に及ぶ廃屋のリフォーム計画がスタートしたものの、ふと彼女は我に返って思う。
たとえヴィラが生まれ変わっても、一緒に暮らすパートナーもいない。
この選択は過ちだったのだろうか。
そして自分は一生このまま孤独なのだろうか。
運に見放された寂しい彼女は、何かにつけてくよくよと思い悩み続ける。

欲しい欲しいと思っているうちは手に入らないものだ。
滞っていた水を人生になぞらえ、その執着を捨てた時、再び水は流れ始めると物語はいう。

フィレンツェコルトーナ、ローマ、ポジターノ、モンテプルチアーノといったイタリアの美しい町並みが、ややもすれば平凡なストーリーをぐっとドラマチックに盛り上げる。
ヒロインのストーリーはおまけに過ぎず、「旅情」と同じくイタリアの旅を味わう作品と思えばそう悪くない。

「ジャンパー」のダイアン・レイン
サイドウェイ」のサンドラ・オー、
アバウト・タイム 愛おしい時間について」のリンジー・ダンカン、
ヴィンセント・リオッタ、
戦場のピアニスト」のヴァレンタイン・ペルカ、
サーサ・ヴリチェヴィッチ、
「狂った血の女」のマッシモ・サルキエッリ、
パヴェル・シャイダ、
ロベルト・ノービル、
ジュリア・シュタイガーウォルト、
シチリア!シチリア!」のラウル・ボヴァ共演。

原題「UNDER THE TUSCAN SUN」
2003年 アメリカ、イタリア制作。