おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

クリミナル 2人の記憶を持つ男

日差しのありがたみを感じる、穏やかな晴天の一日。

映画「クリミナル 2人の記憶を持つ男」を観た。

ここに険しい面持ちでロンドンの雑踏を行く男がいる。
ジェイソンボーンみたいな彼は、CIAロンドン支局の諜報員。
カバン店で現金とパスポートの詰まった謎バッグを受け取ると、周囲を警戒しながらタクシーに乗り込んだ。
どうやらどこかの組織に追われているようで、ロンドン支局の上司に助けを求めている。
そんな緊迫のシーンから物語は幕を開ける。

あらゆる政府を転覆させるという、世界規模の革命を目論む巨大通信機器メーカーの経営者がいる。
そいつのもとでプログラムの開発を担ってきたオランダ人技術者が、このたび米国に保護を求め取り引きを持ちかけてきた。
彼が握っているのは軍のミサイルをハッキングして自在に操作できてしまう恐ろしいプログラム。
こんな技術が反社会的なアナーキストの手にあっていいわけがない。
そこで取り引きに応じ、オランダ人を匿ったのが冒頭の諜報員だった。

ところがCIAほどの組織も力及ばず、同じくオランダ人の行方を追うアナーキストに裏をかかれ、諜報員は港の倉庫で拷問死させられてしまったよ。

プログラムを持ったオランダ人をどこに匿ったのか。
それを知るのは口を割らぬまま死んだ彼だけだ。

困り果てたCIAは、まだ実験段階にあったある技術を試みることにした。
それは死んだ人間の記憶を別の人間の脳に転写する技術だという。

こうして人体実験のレシピエントとして白羽の矢が立てられたのは死刑囚のオッサン。
もともと脳に障害があり、凶暴で衝動の抑制が効かない社会不適合者だという。

さあ、果たして諜報員の記憶は蘇るのか。
CIAの目論みはうまく行くのだろうか。

物語は、他人の記憶を植え付けられたオッサンを巡って繰り広げるアクションサスペンス。

他人の記憶に翻弄される哀れな無法者。
あらゆる政府は悪であり崩壊すべきと主張するアナーキスト
国家のためなら個人の権利など無きに等しいCIA。
保身のためなら誰とでも手を結ぶオランダ人技術者。
それに乗っかるロシア政府。
これらの登場人物によって構成されるストーリーには善悪という分かりやすい対立軸が存在しない。
それぞれが身勝手な正義を信じる悪人という、複雑な世の様相をうまく表している。

ただ、女子供におもねってしまう安易な展開のせいで、主人公のダーティな個性が失われ凡庸な作品に落ち着いてしまった点が惜しい。
記憶を呼び戻すファクターとなるのは別に妻子でなくても、ボケ始めた老母と愛猫などでもよかったような気がする。

世界中の人々の思想まで筒抜けな米国の個人情報システムがしれっと登場する。
エドワード・スノーデンが告発していた例のシステムに違いない。
何気ない冒頭のワンシーンだが、観客にとっては派手なアクションや記憶の転写云々以上の衝撃だ。
ストーリーそっちのけで、監視されている心地悪さがふいに蘇ってくる一作。

デッドプール」のライアン・レイノルズ
欲望のバージニア」のゲイリー・オールドマン
「ブラック・ファイル 野心の代償」のアリス・イヴ
「マラヴィータ」のトミー・リー・ジョーンズ
「宿敵 因縁のハットフィールド&マッコイ」のケヴィン・コスナー
「ハモンハモン」のジョルディ・モリャ、
「セブンス・サン 魔使いの弟子」のアンチュ・トラウェ
マイケル・ピット
ワンダーウーマン」のガル・ガドット共演。

原題「CRIMINAL」
2016年 制作。