おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

マン・ダウン 戦士の約束

朝の日差しはどこへやら。
空はすっかり厚い雲に覆われてしまった。
お天気下り坂の一日。

映画「マン・ダウン 戦士の約束」を観た。

銃を構え、闇夜に紛れて廃墟のような建屋に忍び込む軍人がいる。
囚われていた我が子を見つけ、銃撃を避けながら脱出を試みる。
息子を抱えようやく建屋を出た時、彼の視界を眩しいライトが奪った。
そんな謎めいたシーンから物語は幕を開ける。

ここはアフガニスタン カブールにある米軍キャンプ。
面談のため上司のオフィスに呼ばれた海兵隊員がいる。
雑談をまじえつつも、なぜか自分のことについては触れたがらない隊員。

そもそもきみはなぜ海兵隊員を目指したんだい?
上司の何気ない問いに、海兵隊の厳しい訓練に明け暮れた日々の記憶が蘇ってきた。
やがて彼は、家族のことや同僚のこと、そして上司が何より知りたがっているカムデッシュで起きたある事故のことについてぽつりぽつりと語り始めるのだった。

さて所変わって、ここは廃墟と化した米国の都市。
同僚とふたり、崩壊した無人の世界を彷徨う彼の姿がある。
世界に何があったのか彼は知る由もない。
ただ、生きてると信じてやまない息子の行方を必死になって探しているのだ。

ここはカブール駐屯から数年後の世界なのだろう。
息子は見つかるだろうか。
そして米国に一体何があったのだろう。

崩壊した世界とアフガニスタン駐屯に至るまでの記憶。
物語は、この二つの世界を断片的かつ交互に描きつつ、ある海兵隊員の真実に迫ってゆくミステリー。

パズルのピースを拾い集めるように、ありふれたストーリーを断片的に描くことによって、観る者を引き込むミステリアスな仕上がりになっている。

どこか現実味のない世界崩壊後の様相。
ほどなくその世界が彼の精神世界であることに気づかされる。
ああ、崩壊したのは世界ではなく、彼の精神だったのだ。

イラクアフガニスタンからの復員兵は5人に1人がPTSDを発症。
約20万人がホームレスとなり、1日につき22人が自殺を図っているという。
最後にそんな一文が添えられている。

彼らもまた、この地獄のような精神世界を彷徨っているのだろうか。
PTSDに病める兵士の精神を覗く、胸をえぐられるような一作。

欲望のバージニア」のシャイア・ラブーフ
「クリミナル 2人の記憶を持つ男」のゲイリー・オールドマン
モーガン プロトタイプL-9」のケイト・マーラ
チャーリー・ショットウェル、
アイ・フランケンシュタイン」のジェイ・コートニー
サンシャイン・クリーニング」のクリフトン・コリンズ・Jr共演。

原題「MAN DOWN」
2015年 制作。