おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

つぐない

ぼんやりと霞がかかったような晴天の一日。

映画「つぐない」を観た。

時は1935年。
ここはイングランドの大きなお屋敷。
多感で想像力豊かな少女が打つタイプライターの音が子供部屋に響いている。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

ふと窓の外に目線をやった少女は息をのむ。
庭園の泉の前で何やら言い争っている若い男女が見える。
それは彼女の姉と、屋敷に仕える青年の姿だった。

青年は家政婦の息子で、主の援助で大学に通っている。
屋敷のお嬢様に恋心を抱いているが、引け目を感じ素っ気ない態度を取りがちだ。
一方、姉の方も彼が好きなのに特権階級意識とプライドが邪魔をし、心にもない意地悪な態度を取ってしまうのだった。

素直に思いを伝えることが出来ない、困った恋人たちである。

さて、そこで青年、泉での反省を踏まえ、お嬢様にラブレターをしたためた。
何度も書きなおし、ようやく書き上げたものの直接渡す勇気がない。
そこで、姉に渡してもらえるよう少女に託した。

手紙を携えた少女が走り去ってから彼は気づく。

・・・やばい。
間違えて草稿文の方を渡してしまったぁぁあ。

それは彼が気ままに書いた情熱的かつ卑猥な文だった。
青年に淡い恋心を抱く少女が、それをこっそり読んでしまったものだから大変。
13歳の少女にはあまりに刺激的過ぎた。

しかもラブレターを機に、ようやく心通じ合った姉と青年の情事まで目撃してしまう。
男女の秘め事などまるで理解できない少女は混乱する。
青年は性的倒錯者に違いない。
そして姉はその毒牙にかかった犠牲者だ。

折り悪く、そんな時に限って事件は起こるのだった。

物語は、イアン・マキューアンの「贖罪」を映画化。
少女の嘘の証言と戦争によって引き裂かれてしまった恋人たちの顛末を描くヒューマンドラマ。

強い思い込みによって事件の記憶をそっくり摩り替えてしまった少女。
彼女なりの正義であり、決して悪気があったわけじゃなかった。
しかし、物事を理解できる大人になるにつれ、彼女はようやく自分が犯した罪の重さを知る。

自らの手で愛する人々の運命を狂わせてしまった、償いきれない罪を背負って生きる女性。
無実の罪により服役を経て、兵卒として北フランスの戦場へ送られてしまう青年。
そして一族と縁を断ちひとりロンドンで恋人を待ち続ける姉。
この三者が辿った残酷な運命を切なく描き出す。
逃れられぬ人の苦しみに触れる一作。

青年が彷徨う戦場の一幕は、他の作品とはまた違った角度でダンケルクの凄惨さを捉えている。

「ブルックリン」のシアーシャ・ローナン
「ヴィクター・フランケンシュタイン」のジェームズ・マカヴォイ
「素晴らしきかな、人生」のキーラ・ナイトレイ
Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」のパトリック・ケネディ
ドクター・ストレンジ」のベネディクト・カンバーバッチ
「トランストリップ」のジュノー・テンプル
わたしの可愛い人 シェリ」のハリエット・ウォルター、
プライドと偏見」のブレンダ・ブレシン、
ゲーム・オブ・スローンズ」のアルフィー・アレン
ロモーラ・ガライ
ビザンチウム」のダニエル・メイズ、
ノンソー・アノジー
フォックスキャッチャー」のヴァネッサ・レッドグレイヴ共演。

原題「ATONEMENT」
2007年 イギリス、フランス制作。
PG-12