おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

冬の猿

早いもので十一月も末日となった。
このところぽかぽかと暖かい日が続き、窓辺のアボカドが成長期でもないのにすくすくと新芽を伸ばしている。

映画「冬の猿」を観た。

波打ち寄せる浜辺をドイツ兵が行進している。
ここはドイツ軍占領下にあるフランス ティグルビルの村。

高台には中国風にしつらえた娼婦館がある。
そこのバーで友人と飲んだくれているオッサン。
海軍時代を過ごした中国の地に思いを馳せる彼は、いつもここで泥酔している。

おっとそこへサイレンが鳴り響いた。

連合軍の爆撃機が、村に駐屯しているドイツ軍めがけて砲弾を雨あられと落とすではないか。

でも豪快な酔っ払いのオッサンは無敵。
爆撃の雨をものともせず、千鳥足で友人とふたり我が家を目指す。

オッサンは村で民宿を経営している。
激しくなる対空砲火と爆撃の衝撃で建屋は崩壊寸前。
もはやこれまでか。
彼は恐怖のあまり泣きじゃくる妻を前に誓った。

生き延びて民宿を再開できたら、二度と酒は飲まねえ!

それから十数年。
あの日以来、きっぱり酒を断ったオッサン。
かつての飲み仲間からは、無口でつまんねえ男になっちまったと忌み嫌われている。

さて、それは冷たい冬の雨の日のことじゃった。
夜更けの民宿に季節外れの客がやってきた。
パリからやってきたその男、滞在期間は未定だという。
仕事というわけでもなさそうだし、いったい村に何をしに来たのだろう。

不審なそいつはさっそく向かいの酒場に繰り出すやいなや、したたかに酩酊して戻ってきたよ。
どうしょうもねえ酔っ払いだ。

オッサンを相手にくだを巻き、スペインの思い出を滔々と語る彼の姿を見ているうちに、むかし中国で聞いた、冬になると山から迷い出てくる子猿の話をふと思い出した。

この男にも何か迷いがあるに違いない。
オッサンはそんな彼に、かつての自分の姿を重ねるのだった。

物語は、眩しい過去の思い出にすがって生きる男たちの姿をほろ苦く描くヒューマンドラマ。

泥酔することで日常から解き放たれ、身も心も自由な旅人になれると彼らはいう。
現実から逃げ、酔いの勢いに任せないと何ひとつ成し遂げられない男の弱さが見て取れる。
彼らは、その辛い胸の内を汲んでくれとでも言いたいのだろうか。
酔っ払いに振り回される周りの人間にとっては迷惑極まりない。

いい大人がなに甘ったれてんだろう。
なにやらもやっとする男性向けの一作。
残念。

フレンチ・カンカン」のジャン・ギャバン
ポール・フランクール、
ヘラ・ペトリ、
「赤い風車」のシュザンヌ・フロン
ダンケルク」のジャン・ポール・ベルモンド
アンヌ・マリー・コフィネ、
ノエル・ロクヴェール、
ガブリエル・ドルジア共演。

原題「UN SINGE EN HIVER」
1962年 フランス制作。
モノクローム