おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

リメインダー 失われし記憶の破片

雨まじりのどんよりした空模様の一日。

映画「リメインダー 失われし記憶の破片」を観た。

スーツケースを引き街を行く青年。
しきりに背後を気にする彼の姿を、心配げな面持ちで追う女がいる。

二人の間にいったい何があったのだろう。

おや?
その時、ビルから張り出したガラスの大屋根が割れ、バラバラと崩落を始めたではないか。
異常に気づいた人々が足を止める中、彼はさほど気にする様子もなく歩みを進めた。

次の瞬間、塊になって落下した物体が彼を直撃しアスファルトの地面に叩きつける。
そんなショッキングな映像から物語は幕を開ける。

植物状態を経て、青年は奇跡的に意識を取り戻した。
地獄のような苦しいハビリに耐えようやく自宅に戻って来れたものの、事故の記憶は断片的でそれ以前の記憶は真っ白。
彼は抜け殻のような人間になってしまった。

弁護士によると前例のない高額な賠償金が取れるという。
ただし訴えない、公にしないことが条件だ。
そもそもはっきり覚えていない事故について語れるわけがない。
そこで彼は示談金の850万ポンドを素直に受け取ることにした。

一気に富裕層の仲間入りをしたものの、事故の後遺症が彼を苦しめ続ける。
それは夢なのか、それとも断片的な過去の記憶なのか。
古びた建物を彷徨う老婆と少年の幻覚をたびたび見るのだ。

老婆はいう。
あんたは見落とした。

いったい何を見落としたというのか。
これら記憶の断片が意味するものは何だろう。

このバラバラの記憶をそっくり再現すれば、ひょっとして記憶が戻んじゃね?

思いついた彼は、うなるほどのカネに物を言わせて記憶の中の建物を探し出し、大勢の役者を配置した大掛かりな記憶の再現を試みるのだった。

常軌を逸した記憶の再現の果てにある真実とは何か。

物語は、事故で失った記憶を辿る青年を描く謎めいたミステリー。

撮影のない演劇を役者に繰り返し行わせるうちに、彼はよりリアルな再現を求め暴走してゆく。

謎めいた描写が観る者をぐっと引き込む。
伏線が回収しきれておらす、本人の過去はもちろんのこと、アフリカ系米国人女性とスーツケースの関係も、そのスーツケースを追う自称警官を名乗る二人組みの正体も謎なままだ。
ただ、事故以前の記憶が空白となれば納得がいく。

観る者によって解釈が分かれそうだが、これおそらく事故で目覚めることのないまま夢の中で同じ出来事を永遠に繰り返す、時間の牢獄に囚われた男の話だったのではないかと思う。

パイレーツ・ロック」のトム・スターリッジ
クシュ・ジャンボ、
「クライムダウン」のエド・スペリーアス、
「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」のニコラス・ファレル、
ジャメイン・ハンター、
ロッキー・マーシャル、
ショーン・プレンダーガスト、
アーシャー・アリ共演。

原題「REMAINDER」
2015年 イギリス、ドイツ制作。