おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ベツレヘム 哀しみの凶弾

西風吹く曇り空の一日。
週末は一気に真冬の寒さだという。
冷たい風に備え、急遽ベランダの植木鉢にダンボールの冬囲いをこしらえた。

映画「ベツレヘム 哀しみの凶弾」を観た。

パレスチナ自治区ベツレヘムにはハマスやアル・アクサといったイスラム系過激派組織が存在する。
イスラエル諜報機関パレスチナの内通者からそれらの情報を入手していた。
そんな一文から物語は幕を開ける。

ここはベツレヘム郊外の荒地。
道端の道路標識をめがけライフルで射的に興じる少年たちがいる。
実弾ゆえ道路標識は穴だらけ。
やっとヒゲが生えてきた年頃の、粋がったヒヨッコたちだ。

少年たちの遊びはエスカレート。
意気地のなさをバカにされた少年が、仲間に囃し立てられながらボロボロの防弾チョッキで弾を受ける度胸試しをするはめになった。
その時、彼のケータイが鳴る。

イスラエル諜報機関の男からだ。

少年の兄はアル・アクサの指導者。
にもかかわらず彼は内緒でイスラエルの情報屋をやっている。

なぜだろう?

呼び出しを受けた少年がのこのこと約束の場所に行くと担当の諜報員が待っていた。
この穏やかな男は、小遣いをくれるだけでなく、仲間内のトラブルから家庭の悩みまで親身になって少年の話を聞いてくれる。
敵対するイスラエルの人間だが、孤独な少年にとってさながら父や兄のように頼れる存在だ。
よって、兄に関する情報を売っているという罪悪感には乏しかった。

折り悪く、そんな時に事件は起こる。
エルサレムで爆破テロが起き、兄が犯行声明を挙げたのだ。

イスラエル諜報機関は血眼になってこの兄の行方を捜し始めた。
情報屋である弟を泳がせ、兄と接触する機会を狙って二人とも始末してしまえ、というのがイスラエル上層部からのお達しだ。

・・・ひどい、情報屋は使い捨てか。
犬以下の扱いではないか。

しかし、情報屋として付き合い始めて2年。
担当諜報員にも、まるで息子のような少年に対し少なからず情がわいていた。
そこで上層部に逆らい、テロリスト捕獲作戦の当日、少年が巻き込まれぬよう、それとなく別の場所へ彼を誘導するのだった。

物語は、イスラエルパレスチナ双方の武装組織に利用される少年の姿を描いたヒューマンドラマ。

なぜ彼らは憎しみ合うのか。
それは全ての大人たちに責任があると物語はいう。

何も知らぬ少年をスパイや過激派に仕立ててしまう、憎悪に駆られた大人たちの手口が実に醜い。
特に、ヘビの生殺しみたいな中途半端な情けほど残酷なものはない。
追い詰められた少年に救いの手を差し伸べられなかった諜報員の不甲斐なさが悔やまれる。

少年を通し、ライフルやマシンガンを抱えた人々が平然と街を行くパレスチナの日常に触れる一作。

ヘブライ語アラビア語を併記したエンドロールのように、この独特の美しい表記を持った二つの文化が共に手をたずさえてゆく日が来ればいいのに。

シャディ・マーリ、
ツァヒ・ハレヴィ、
タリク・コプティ、
ヒサーム・オマリ、
イブラヒム・サッカラ、
ミハル・シュタムラー、
カレム・シャクール、
ヨッシー・エイニ、
エフラット・シュナップ共演。

原題「BETHIEHEM」
2013年 イスラエル、ドイツ、ベルギー制作。