おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

あの日、欲望の大地で

足元の落ち葉がかさかさと乾いた音を立てる。
吹く風冷たい晴天の一日。

映画「あの日、欲望の大地で」を観た。

荒野に佇むトレーラーハウスがめらめらと燃えゆく映像から物語は幕を開ける。

ベッドに男を残し、裸で窓辺に佇む女性。
おおっぴらに窓を開けると、道を行く通学途中の母子連れと目が会ってしまった。
見てはならぬものを見てしまった。
そんな顔でそそくさと通り過ぎる母子らの姿を、彼女はぼんやりと眺める。

岬の洒落たレストランでマネージャーを勤める彼女は、寂しさを紛らわすかのように行きずりの男をとっかえひっかえ自宅に連れ込んでいる。
そして翌日は、決まって身体のどこかに自傷行為をするのが常だ。

今日も職場近くの断崖に腰を下ろすと、小石をおもむろに掴み太ももに傷を入れる。
己に対する嫌悪感からか。
それとも犯した罪を忘れないためにだろうか。
断崖から下を見下ろすも、さすがにその一歩を踏み出す勇気はなかった。

なぜ彼女は自分をここまで痛めつけるのだろう。

すべては冒頭のトレーラーハウスから始まった。

彼女の母親は、不倫相手としけ込んでいたトレーラーハウスで焼死している。
田舎町で二つの家族を不幸のどん底に突き落としたスキャンダラスかつ悲しい事件だった。

どういう経緯で二人は不倫に至ったのだろう。
不倫相手の息子も、人々の無責任な噂ではなく父親の真実が知りたい。
そこでその手がかりを、同じ境遇にある彼女に求めてきたのだ。

周囲から孤立する二人はそれぞれの親たちが過ごしたように、密かな時間を共有するうち、次第に惹かれあってゆくのだった。

物語は、現在と過去を巧に交錯させながら、心に深い傷を負う女性とトレーラーハウスで起こった火事の真実に迫ってゆくミステリー。

幸せになることが許されない運命を背負った女性。
犯してしまった罪の重さと、母に似た己の弱さが彼女を苛み続ける。
そんな彼女が、十数年にわたる孤独と放浪の果てに辿り着いた運命的な救済を描く。

我が娘の赦しによって罪が購われた瞬間、彼女もまた亡き母の全てを受け入れたに違いない。
母と娘、三代にわたる葛藤と贖罪を描いた重い一作。

ひとつだけ難を挙げるとしたら、ヒロインの現在と若き日をそれぞれ演じるセロンとジェニファー・ローレンスの面差しが全く似ていないことだろうか。

「ダーク・プレイス」のシャーリーズ・セロン
ジョン・コーベット、
アイム・ソー・エキサイテッド!」のホセ・マリア・ヤスピク、
テッサ・イア、
ダニー・ピノ
パッセンジャー」のジェニファー・ローレンス
オーバードライヴ」のJ・D・パルド、
「きみがくれた未来」のキム・ベイシンガー
ヨアキム・デ・アルメイダ、
「人生はノー・リターン 僕とオカン、涙の3000マイル」のブレット・カレン共演。

原題「THE BURNING PLAN」
2008年 制作。
PG-12