おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

スウィッチ

空気が冷え冷えとした薄曇りの一日。
フウセンカズラの実も色づき、丸々としたハート模様の種がたくさん収穫できた。
毎日通っていたミツバチのことが何かにつけて思い出される。

映画「スウィッチ」を観た。

ここカナダ モントリオールに暮らす若い女性がいる。
デザイン画を手がけるフリーランサーの彼女は、不況のあおりでここ数ヶ月仕事に事欠いている。
おまけにカレシもいない。
どうやら今年はバカンスどころじゃないみたい。

ちょうどそんな時、得意先の出版社女性スタッフからアパート交換サイトの話を耳にする。
一定の期間だけ互いの家を交換しましょうという趣旨のシェアサイトで、その名もスウィッチ.com。

家の写真を撮ってサイトに登録し、あとは条件や行き先の希望を書き込むだけ。
条件に合う相手とネット上で個人契約するので手数料もかからない。
ホテルとは違った体験が出来るし、カネをかけずにバカンスを楽しみたいという人にはうってつけだ。

実際にサイトを利用した女性スタッフは、パリでアバンチュールまで楽しんだというではないか。
超うらやましー。

さっそく彼女も登録だ。
パリ7区でアパートを所有する女性ととんとん拍子に話が進み、国際郵便を通じて鍵を交換。

こうして、わくわくしながら憧れのパリへ降り立った彼女を待っていたのは、エッフェル塔にほど近い豪邸だった。
のんびり市内観光を楽しみ、アパートのテラスでライトアップされたエッフェル塔を独り占めしながらディナーを満喫。
なんて優雅な時間だろう。
充実感を覚えながら彼女は眠りについた。

ところが、夜更けに異変を感じて目覚める。
食ったものが悪かったのだろうか、気分が悪い。
ぐったりとバスルームに籠もっていたその時だった。

大きな物音がしたかと思うと、屋敷のドアをぶち破り警官隊がばたばたと突入してくるではないか。

え?
いったい何が?

彼女は屋敷の所有者とみなされ、わけが分からないまま連行されてゆく。

この屋敷の所有者は、政府高官の子息殺害に関与しているという。
先ほど寝室で首のない遺体が発見されたというのだ。

遺体など見てもいないし、彼女にとって寝耳に水の話だ。
自分は所有者とは別人で、アパート交換サイトを通じてやってきた旅行者だと必死に訴えるも警察は意に介さない。

それもそのはず。
手荷物のパスポートはいつの間にかすり替えられ、顔写真は彼女のまま、屋敷の所有者である女性のものになっているではないか。
しかも、彼女が利用したはずのアパート交換サイトが見つからない。

・・・はめられた!

ようやく気づいたが後の祭りだ。
身分を証明する手立てがない。
バカンス中に働くフランス人はモチベーションが低く、まるで仕事をする気がないのだ。
それは大使館をはじめとする役所も警察も同じであった。

このままではみすみす犯人として収監されてしまう。
危機感を覚えた彼女は、隙を見て拳銃を奪い逃走するという強硬手段に出るのだった。

物語は、ウェブサイトを通じて家を交換したばかりに、恐ろしい陰謀に巻き込まれてゆく女性を描いたアクションサスペンス。

旅先で身分を証明する手立てを失い殺人犯に仕立て上げられてしまう女性と、そんな彼女を追うオッサン刑事。
この二つの視点で事件の真相に迫ってゆく。
後半にかけては思いもよらぬ展開が待ち受けており、単なる背乗り事件で終わらせない点が見事。

ネット介して見ず知らずの他人とモノやサービスをシェアする試みは、全ての人間が善良であるという絶対条件の下でしか成り立たないということがよく分かる。

バカンスシーズンだからなのか、それとも普段からこの体たらくなのか。
フランス人の仕事に対する姿勢、そのぞんざいぶりが見どころ。
個人が徹底して優先される社会の負の一面を垣間見る。
長時間労働や過労死のない社会を目指すならば、それによって生じる不便も受け入れなくてはいけないのかも。

余談ながら、こんなに必要かと思うほどヒロインのバストを捉えた入浴シーンが多い。
オッパイ星人には嬉しい一作。

カリーヌ・ヴァナッス、
マキシム・ロイ、
カリム・サレー、
「悪党に粛清を」のエリック・カントナ
マダム・イン・ニューヨーク」のメーディ・ネブー、
オーレリアン・ルコワン、
ジェイコブ・デスバリオ、
カリーナ・テスタ、
ニシーマ・テイロー、
「わたしはロランス」のソフィー・フォシェ共演。

原題「SWITCH」
2011年 フランス制作。