おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

サボテンの花

午後になって日差しが出てきた。
冷たい空気の一日。

映画「サボテンの花」を観た。

ここはニューヨーク。
静まり返った夜更けの住宅街。
路上駐車された車のワイパーに一輪ずつ黄色い花を挿してゆく、酔狂なひげもじゃ男の姿から物語は幕を開ける。

そいつが立ち去った直後、アパートから若い女が飛び出してきた。
ショートカットにミニスカートのイマドキ風なギャルだ。
彼女は通りの向かいのポストに手紙を投函すると再び部屋に戻って行く。

おや、ラブレターかな?

いや、そうではないらしい。
部屋には食卓の準備がなされていたが、どうやら待ち人は来なかった模様。
思い余った彼女はガス自殺を図るではないか。

なるほど。
手紙は恋人に宛てた自殺予告か。
ちょうどタバコを買いに出た隣の青年が臭いに気づき、事なきを得た。

なんでも彼女は、かなり年上のオッサン歯科医と不倫関係にあるらしい。
そのオッサンが最近つれないという。
しょせん相手は家族のいる身。
叶わぬ恋に絶望した彼女は、つい衝動的な行動に走ってしまったのだ。

さて翌日、クリニックで自殺予告の手紙を受け取ったオッサン歯科医は慌てふためいた。
いつしか彼女に本気で惚れ込んでいたオッサン。
自殺まで図ろうとした彼女がますます愛しくなり、プロポーズをすることに決めた。

ただ、問題がある。
遊び人のオッサン、付き合う女たちには妻子持ちだと嘘を付いているが、本当は独身貴族。
都合のいい関係を続けるにはその方が良かったのだが、彼女をずっと騙していたことになる。
いまさら独身だ!なんてとても言い出せないよ。

そこでオッサン一計を案じる。
実は妻の方から離婚を切り出してきたんだ。
だからちょうどいい、俺たち結婚しよう!

ところが優しい彼女は別れる奥さんや子供のことが気がかりだという。
プロポーズは嬉しいが、略奪愛は後ろめたい。
一度会ってきちんと話をしたいというのだ。

やばい。
急遽、妻の代役を立てねばならぬことになってしまった。
そこで白羽の矢を立てたのが、長年彼のクリニックで有能なパートナーとして手際よく患者を捌いてきた、古女房のような中年看護婦だった。

頼む!20分だけ妻の代わりをやってくれ。

さあ、嘘に嘘を重ねてゆくオッサンの恋の行方。
果たしてどうなることやら。

物語は、オッサン歯科医を取り巻く波乱の恋模様を描いたコミカルなラブストーリー。

嘘で塗り固めた思いつきのような寸劇を演じるうちに、それぞれの内に秘めていた思いが露になってゆく。

大切なものは思いがけないほど身近にあったりする。
あなたがそれに気づいていないだけだよと物語はいう。

他人の心などおかまいなしに自分の都合を押し付ける身勝手なオッサンに対し、ミニスカのカノジョも、そして慎ましやかな中年看護婦もとかく誰かのために尽くそうとする。
この女たちの思いやりが、クソッタレな恋愛騒動を明るく和やかなものにしている。

バーグマンがこれまでのクールなイメージを覆し、ぎこちないコミカルなダンスまで披露。
年を重ねた彼女がとてもキュートに見えた。

冒頭のひげもじゃ男が挿して行く小さな幸せを受け取ったような気分になれる温かな一作。

「永遠に美しく・・・」のゴールディ・ホーン
リック・レンツ
シャレード」のウォルター・マッソー
秋のソナタ」のイングリッド・バーグマン
ジャック・ウェストン
イヴ・ブルース
アイリーン・ハーヴェイ
ヴィトー・スコッティ共演。

原題「CACTUS FLOWER」
1969年 制作。