おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

処刑人

時間と共に分厚い雲が空を覆い始めた。
昼だというのに薄暗い。
気温高めながらすっきりしない一日。

映画「処刑人」を観た。

アイルランド系の人々が多い、ここサウスボストンの教会では聖パトリックデーのミサが行われている。

ちょうど30年前の今日、白昼堂々通りで女性が暴漢に刺殺される痛ましい事件が起こった。
助けを求める彼女を前に、人々は通報するわけでもなくただ見ているだけだったという。
真に恐れるべきは暴漢ではなく人々の無関心だと神父は訴える。

そんな説教の最中、二人の男がやおら立ち上がった。
説教する神父のことなど気にも留めず、ずかずかと壇上に歩みを進め、キリスト像の足元に跪くと祈りを捧げる。
「真理」と「公平」。
それぞれ手の甲にタトゥーを刻んだ彼らは兄弟である。

神父め、やっと気づいたようだな。
そんな捨て台詞を残し、教会を後にする二人の姿から物語は幕を開ける。

さて、下町の路地裏で殺人事件が起こった。
殺人など日常茶飯事だが、屈強なロシアンマフィアたちが撲殺されたのだからただ事ではない。
すわ、ギャングの抗争か?
トンチンカンな現場検証を始めた地元刑事たちを押しのけ、ひとりの男が捜査の指揮権をかっさらった。

アリアを聴きながら並外れた観察眼で真実を紐解くFBIの変人捜査官だ。
さっそく生肉加工工場で働く冒頭の兄弟を容疑者として特定した。

ところが、この兄弟、捕まえる前にのこのこと出頭して来るではないか。
しかも事件について正直に語り始めた。

馴染みの酒場に不当な立ち退きを迫るロシアンマフィアとトラブルになり、殺害されかけたところをとっさの機転で返り討ちにしたのだという。

地元の人間は口々に、二人のことをまるで天使のようだという。
そして事件はたちまちマスコミの知るところとなり、マフィアを殺した彼らを英雄扱いで「サウスボストンの聖人」と報じた。
こうした世論の後押しもあり、正当防衛が適用され、二人は晴れて無罪放免となるのだった。

さて、その前夜のことじゃった。
留置場で一夜を過ごすことになった二人は同じ夢を見る。

罪深き者を罰し、悪を滅ぼせ。

目覚めた二人は、これを天啓と確信。
人間のつくった法は欠陥だらけだ。
被害者の人生を奪った悪人に対する量刑は信じられないほど軽い。
それならば神の法を適用しよう。
その番人として彼らは行動を開始するのだった。

物語は、天啓を受けマフィアの殲滅を始めた兄弟を描く、痛快なハードボイルド風クライムバイオレンス。

荒んだこの世は人々の無関心が招いた結果なのだ。
見て見ぬふりは許されない。
全ての人々が真実を受け止め責任を負わねばならないと物語はいう。

玄人はだしとはいえ、殺しのプロではない彼らがマフィアの大物を次々と仕留めてゆく。
その鮮やかな仕事ぶりはたまたまツイていただけなのか、それとも本当に神の奇跡によるものなのか。
現場で推理する変人捜査官の再現ドラマによって事件の一部始終を追って行く構成が面白い。

タイトルから重暗い作品をイメージしていたので、思いがけない軽快なノリに驚いた。
痛快さと神々しさが程よくミックスされたカッコイイ一作。

ファントム 開戦前夜」のショーン・パトリック・フラナリー
AIR エアー」のノーマン・リーダス
「ハンター」のウィレム・デフォー
ボブ・マーレイ
デヴィッド・フェリー
ブライアン・マホニー
デヴィッド・デラ・ロッコ
カーロ・ロータ
ロン・ジェレミー
「海賊じいちゃんの贈りもの」のビリー・コノリー共演。

原題「THE BOONDOCK SAINTS」
1999年 制作。
PG-12