おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

アイアンクロス ヒトラー親衛隊SS装甲師団

ぽかぽかと暖かな晴天の一日。
そういえば、クリスマスも近いというのに今年は街のクリスマスソングがやけに控えめだ。
暮れのただでさえ忙しい時期に、あの曲を聴くと余計に急かされるような気がする。
あれはサンタクロースを信じている子供しか喜ばないということが大人たちもやっと分かったのだろうか。

映画「アイアンクロス ヒトラー親衛隊SS装甲師団」を観た。

戦争の後に残るのは失われたものの記憶。
敵味方の兵士たちが死と向き合った記憶だけだ。
勝者の栄光は敗者の悪を暴き世界に知らしめるが、自らの罪は闇に葬る。
そんな一文から物語は幕を開ける。

時は1943年。
第二次世界大戦末期。
ここに、第一ナチス親衛隊装甲師団所属の兵士がいる。
装甲師団といってもヨロイを着ているわけではないし、特段装甲が厚いわけでもない。
ただの生身の歩兵だ。

愛する祖国を守るため、彼は故郷ブラウンシュヴァイクに妻を残して出征した。
バルバロッサ作戦から一年。
ロシア、イタリア、ウクライナと欧州各地を転戦し、ソ連兵やパルチザンを相手に戦いを繰り広げている。
つまり毎日が戦場だ。
無謀な戦いをせぬ皆の規範たる優秀な上司に恵まれ、伍長としてわずかな部下を率いる彼にも責任と使命感が芽生えてきた。

ところが、ナチスドイツによる欧州統合は近いと思われていたにもかかわらず、ここ数ヶ月は戦況が悪化の一途を辿っている。
敗退に次ぐ敗退に士気も下がる。
また敵のノルマンディー上陸後は、兵士の訓練もソ連打倒を想定したものではなく、国防のための訓練に様変わりしてしまった。

生きるために戦う毎日。
でも、この戦いはいつまで続くのだろう。

そんな先行きの見えない不安と疑問がふつふつと沸いてきた頃じゃった。
苛烈を極めたノルマンディーの戦場で味方とはぐれた彼は、森に潜む同郷の国防軍兵卒に出会う。
そいついわく、ポーランドで虐殺を目の当たりにし、故郷に残してきたユダヤ人の妻が心配で軍を脱走してきたというではないか。

えっ?
でも収容所って単なる労働施設って聞いてたけど?

彼は知らなかった。
祖国が世界を敵に回すようなことを本当にやっているのだろうか。
こうして彼の疑念はさらに膨らんでゆくのだった。

物語は、戦場に身を置くひとりのナチスドイツ兵の思いを淡々と綴ってゆく戦争映画。

歴史は勝者が作ると物語はいう。

映画ではいつも悪役のナチスドイツ兵。
彼らがどんなに酷いことをしてきたのかというのはこれまで嫌というほど語られてきたけれど、個人としての彼らがどんな思いで戦っていたのかは誰も知らない。

主人公の視点に立ったリアルな戦場の様子が見どころ。
戦闘そのものではなく、彼が戦場で何を考え何を感じたか、その魂の叫びにスポットライトを当てたつくり。

家族を愛するひとりの兵士、いや、ひとりの人間として共感を覚える。
戦場に駆り出された我々の祖父たちも同じ思いだったに違いない。
平和を望む作り手の思いが伝わってくる素晴らしい一作。

レオーネ・フリーザ
パオロ・ヴァッカリーノ
フランチェスコ・ミリョーレ
アルブレヒト・ヴァイマー

原題「MY HONOR WAS LOYALTY」
2015年 イタリア制作。