おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

薄氷の殺人

空気が冷たい曇りがちな一日。
12月上旬まで暖かかったせいもあり、シャーレーポピーの種を蒔いた鉢に緑の葉がたくさん出ている。
こんな寒空に枯れてしまったりしないだろうか。
不安に思うなか、歩道の植え込みの根元をふと見ると、同様に緑の葉がわしゃわしゃと生い茂っている。
雑草仲間もこれだけ元気なのだから、案外うちのシャーレーポピーも大丈夫かも。

映画「薄氷の殺人」を観た。

石炭を満載したトラックが走る。
おや?
黒い石炭の中にビニールシートの包みが紛れ込んでいる。
やがて到着した工場のベルトコンベアーを流れるうちに包みは剥がれ、その姿を現した。
人の手首だ。
発見した工員が慌ててラインを止めるショッキングなシーンから物語は幕を開ける。

時は1999年。
ここは中国北部の地方都市。
ほぼ同時期に複数の石炭工場でバラバラ遺体が発見されるという猟奇殺人事件が起こった。
ベルトコンベアーで発見された血まみれの身分証から、被害者は炭鉱で計量係として働く工員と特定。

複数の工場に遺体をばら撒くことが出来るのはトラックドライバーに違いねえ。
そう踏んだ捜査チームは、行方をくらましていた怪しげなトラックドライバー兄弟をとっ捕まえた。
ところが、この逮捕劇がお粗末なもので、返り討ちに遭い容疑者、刑事双方に犠牲者を出す始末。

プライベートで女房に三行半を叩きつけられて以来、心ここにあらずだったなまずヒゲ刑事の不手際もあり、とうとう事件は迷宮入りになってしまった。

それから5年後。
逮捕劇で重傷を負ったなまずヒゲは左遷され、今や工場の保安員。
女房に捨てられ、出世の道も断たれてひたすら呑んだくれる自暴自棄の日々だ。

さて、そんなある日。
彼は同じ捜査チームだった同僚刑事に再会した。
例の猟奇殺人事件が再び繰り返されており、ある女を尾行しているのだという。
それはクリーニング店で働く、あの死んだ工員の妻だというではないか。
事件は全て彼女の周りで起こっている。
それで捜査チームは犯人が彼女に接触する機会をうかがっているのだ。

ここで犯人を挙げれば再び第一線に返り咲けるかも。
それに彼女は稲森いずみに似た、寡黙で儚げな美しいしと。
男だったらほっとけない。

こうしてなまずヒゲは、下心と鬱積した不満をぶつけるように、彼女の身辺を洗う独自捜査にのめり込んでゆくのだった。

物語は、連続猟奇殺人事件を追うダーティな元刑事を描くクライムサスペンス。

近寄る男たちを魅了しことごとく不幸にしてしまう。
彼女は、東野圭吾の「白夜行」に登場するヒロインみたいな魔性の女なのだろうか。
それとも・・・。

女は押し倒せばいいと思っている不器用な主人公。
このなまずヒゲのデリカシーのなさには終始ドン引きだ。
立場を利用し彼女を貪る男たちと何が違うというのだろう。
その思考もにわかには理解しがたい。
ラストシーンの花火は、事件の発端である彼女の辛い記憶「白昼の花火」を上書きする、はなむけの意味でも込められていたのだろうか。
公明正大までとはいかなくても、もう少し誠実さが見て取れる人物像だったら共感を得られたかもしれない。

余談だが、野外でスケートが楽しめてしまうほどの寒さ、自分にはとても耐えられそうにない。

リャオ・ファン
ニー・ジンヤン
ユー・アイレイ
ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝」のグイ・ルンメイ
「サイレント・ウォー」のワン・シュエビン
ワン・ジンチュン共演。

原題「BLACK COAL,THIN ICE」
2014年 中国、香港 制作。
PG-12