おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

フランソワの青春

日差しなく、冷え込み厳しい一日。

映画「フランソワの青春」を観た。

四方に広がる田園風景を望むツリーハウス。
少年が懐に抱え込んだ白いウサギをなでている。
おや、その手の平にはサインペンで妖怪が描き込まれているぞ。
ラクタを集めて創作した品々が並ぶここは、彼のアトリエ兼 秘密基地といったところか。
そんなシーンから物語は幕を開ける。

少年が暮らすのは古びた地主の屋敷。
使用人もいるそこそこ裕福な家庭だというのに、なぜか彼だけボロボロのセーターを着ている。
しかも、母親とおぼしき女性は、明らかに彼を邪険にしているではないか。
虐待でもされているのだろうか。

いやいや、そういうわけではない。
屋敷の主は彼の伯父だという。
ほんの数ヶ月前、両親を事故で亡くし伯父夫婦のもとへ引き取られてきたのだ。
多感な少年は事故のショックから心を閉ざし、半ば創作と空想の中で生きている。
ボロボロのセーターは伯父夫婦の無関心さの現れだろう。

さて、そんな屋敷に来客がやってきた。
伯父の戦友の娘がしばらく逗留するという。
このイングランド女性がなかなかの美人さんときた。
ちょうど成人した息子がカネを無心に帰省していたこともあり、暗くじめじめした屋敷が一気に華やいだ。

しかもこの美人さん、周りの一方的な大人たちとは違い、少年を理解しようと歩み寄ってくれる。
そんなわけで、当初は彼女をスパイと疑っていた少年も、その頑なな心を開いてゆくのだった。

物語は、どこか危うさを秘めた孤独な少年を描く、初秋を迎えたフランス田園地帯の屋敷を舞台に繰り広げるヒューマンドラマ。

徐々に詳らかになってゆく一家の綻びを横目に、11歳の少年が年上のオネーサンに抱いた淡い恋心の行方を追って行く。

他人の気まぐれや裏切りに傷つきながら人は成長してゆくのだと物語はいう。
その過程で、徐々に裏切り行為そのものに無頓着になってゆく。
それこそが大人の証なのだとしたらちょっと悲しい。

ジャン・フランソワ・モーラン
ピエール・ジメール
ジゼール・パスカル
「ビッグ・ガン」のマルク・ポレル
ジャクリーン・ビセット
シャレード」のポール・ボニファ共演。

原題「SECRET WORLD」
1969年 フランス制作。