おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

FLIRT フラート

ぽつりぽつりと雨がぱらつく寒空の一日。
冷え込み厳しく各地から雪の便りが届く。

映画「FLIRT フラート」を観た。

時は1993年、ニューヨーク。
付き合って半年。
これから仕事でパリへ発つ恋人がいう。

ねえ、わたしたちの間に未来はある?

男は答えられず、言葉に詰まってしまった。
とりあえず空港まで送るよ。
ダチに車借りてくるから1時間半ほど待っててくれる?

そう言い残し部屋を後にすると、彼は公衆電話から別の女に電話をかけはじめた。

なあ、おれたちの間に未来はあるかな?

なんて野郎だ。
他にも女が居やがったのか。

そう、この男、女にはとかくだらしない。
これまで何人もの女をとっかえひっかえ生きてきた。
そんなわけだから、いまだに誰が本命なのか決めかねているのだ。

恋人が向かうパリには、彼女の元カレが住んでいる。
そいつは自分とは違い仕事も出来るし、しかもとってもいい奴だという。
もう彼女は帰ってこないかもしれない。

そんな彼女に、時間と愛の証を望むのは間違いだろうか?
車を借りるべくバーを訪れた彼は、見ず知らずの他人に助言を求める。

さて、こうして彼が人々の哲学的意見に耳を傾けているところへ、拳銃片手にうつろな目をした男がやってきた。
そいつこそは、彼に妻を寝取られ絶望の淵にある男であった。

もしも、同じ状況が異なった場所で展開した場合、ストーリーにあるいは結末にどのような差異が生じるのだろう。
物語は、冒頭のニューヨーク、ゲイの黒人を描いた94年のベルリン、前衛劇団の女優を描いた95年の東京。
この3つの都市で繰り広げられる、浮気者たちの顛末を比較する実験的なオムニバス。

わたしたちの間に未来はある?
この問いに即答できないしととは、きっとこの先はないだろう。
ぐずぐずと煮え切らない恋人の真意を見極めるのに相応しい台詞だ。

土地の文化や職業、あるいは性別といった属性の違いによって、助言を与えるギャラリーたちの台詞が様変わりする点が見どころ。

浮気者と称される3人の主人公。
だれかれ構わず同情的に肉体関係を結んでしまう彼らの、一見して煮え切らない行動の先に見えるのは優しさだ。
おそらく本質的には博愛主義者なのだろう。
その優しさが他人を深く傷つけてしまうことに本人が気づいているのか否かははなはだ不明であるが、厄介な人生を歩む彼らの幸せを願わずにはいられない。

サイレントヒル リベレーション」のマーティン・ドノヴァン
「教授のおかしな妄想殺人」のパーカー・ポージー
ビル・セイジ
リアナ・パイ
パトリシア・スキャンロン
エリカ・ギンペル

ドワイト・ユーウェル
ドミニク・ベンダー
ボリス・アルジノヴィック
ジーノ・レクナー
エリナ・レーヴェンソン

二階堂美穂
藤原稔三
原 千果子
永瀬正敏
ハル・ハートリー
池内万作 共演。

原題「FLIRT」
1995年 アメリカ、ドイツ、日本 制作。