おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ワイルドガン

引き続き日差しなく冷えびえとした空模様。
手袋をした手もかじかむ一日。

映画「ワイルドガン」を観た。

気も狂わんばかりに叫ぶ女の姿。
その両手は鮮血に染まり、男が傍らでぐったりと横たわる少年を抱きかかえている。
いったい彼らに何があったというのだろう。
そんな謎めいた恐ろしげなシーンから物語は幕を開ける。

ここに、道なき原野を馬で行く男がいる。
南北戦争に出征してから10年。
長い放浪の末、ようやく彼は実家のあるファウラーの町に戻ってきた。

10年という歳月は思いのほか長く、母は既に亡くなり、かつての恋人は別の男と所帯を持っていた。

牧師の息子として育った彼は、凄惨な戦場を目の当たりにし絶望のあまり神を捨てた。
以来、凄腕ガンマンとして各地で名を馳せ、今ではちょっとした有名人になっている。

しかし、どんな理由があるにせよ人を殺めるなんてもってのほか。
牧師である老父にとって彼は忌々しき息子だった。

その彼が、銃を捨ててふらりと舞い戻り、黙々と実家周辺の開墾に明け暮れるではないか。
畑作りは亡き母の悲願だったというが、彼にどういう心境の変化があったというのだろう。

おりしも町では、悪どい実業家による農場の地上げ行為が行われ、雇われたチンピラ一味が我が物顔で横行。
保安官も逃げ出す無法地帯と化していた。

さて、老父と町へ買出しにやってきた男に、さっそくこのチンピラ一味がからむ。
有名なガンマンを葬れば、名を上げることが出来るからだ。

汝殺めるべからずと神はいう。
老父の命ずるまま、どんな侮辱にも耐え、無抵抗主義を貫こうとする男。
しかし神の教えは、この状況において彼らに救いをもたらすのだろうか。

物語は、鉄道建設のため各地で土地買収が行われた19世紀の米国を舞台に、長年にわたり反目してきた父と息子の和解と贖罪を描いたヒューマンドラマ。

信仰は救いになるのか。
罪と向き合い、神に救いを求める父子の姿を通し我々に問いかける。
正しき道とは神の教えを盲信することにあらず。
迷いながらも己の良心を信じ、主体的に生きることではないかと物語はいう。

大自然の眩い光景がストーリーを情緒たっぷりに盛り上げる。
奇をてらったものではなく、至って地味なつくりだが悪くない。
台詞は控えめで、絶妙な間の取り方であったり役者の演技力による細やかな感情の機微が見どころ。
サザーランド親子共演が楽しめる一作。

「ミラーズ」のキーファー・サザーランド
ハンガー・ゲーム」のドナルド・サザーランド
マージン・コール」のデミ・ムーア
ピクセル」のブライアン・コックス
マイケル・ウィンコット
アーロン・プール共演。

原題「FORSAKEN」
2015年 カナダ、フランス、アメリカ制作。