おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

レイルウェイ 運命の旅路

冷たい風吹く薄曇りの一日。

映画「レイルウェイ 運命の旅路」を観た。

時は1980年。
ここは英国ベリック・アポン・ツイードある退役軍人クラブ。
離れた席でひとり列車の時刻表を指でなぞっている初老の男がいる。
時刻表を読み込む彼は鉄道愛好家のようだ。
それは最新版の時刻表?
それとも昔の時刻表かい?
仲間の問いには答えず、彼はある告白を始めた。

先週、古本市からの帰りに乗るはずだった列車が遅れ、たまたま別の列車に乗り換えた。
その車内である中年女性と出会ったというのだ。
彼女は独り身になったのを期に、憧れだったハイランド地方を巡る旅をしているのだという。
無口でぶっきらぼうな男だが、沿線の地理や文化に詳しく話題に事欠かない。
いつしか話は盛り上がり二人は意気投合。

恋に年齢は関係ない。
二人は旅先のロマンスを経て、クラブの仲間たちにも祝福されそのままゴールインとあいなった。
おお、なんとめでたい。

ところが、共に暮らし始めてほどなく彼女は夫の異変に気づく。
悪夢や幻覚に悩まされ、夜中にぼーっと窓辺に佇んでいたりする。
ただならぬ様子だ。

彼の過去にいったい何があったのだろう。
しかし、夫は何も話してはくれない。

ある時、彼女は書斎で古びたノートを見つけた。
それは、第二次世界大戦中、タイで日本軍の捕虜となった彼のおぞましい手記だった。

時を遡ること1942年。
英国軍の通信兵として駐屯していたシンガポールが陥落。
彼らは日本軍の捕虜となり、貨車に詰め込まれカンチャナブリへ送り込まれる。
そこで彼らを待ち受けていたものは、非人道的との理由から、かつて英国軍が断念したタイからビルマへと繋げる鉄道建設だった。

現在のような重機などなく、ひたすら人力で山を切り開く。
当時の鉄道建設は過酷かつ悲惨な作業で、貧しい移民などによって行われていたという。
それを日本軍は捕虜にやらせたのだ。

そこで彼は、通訳をこなす若き憲兵隊の将校に目を付けられる。
日々行われる虐待と拷問。
そいつこそが幻となり、戦後数十年にわたって彼を苦しめ続ける悪魔の正体であった。

戦犯であるそいつには既に裁きが下っているものと思っていた。
ところが、ふとしたことからその悪魔が今も存命であることを知る。
しかもカンチャナブリで観光ガイドをしているというではないか。

ぐぬぬぬぬ。
この恨み晴らさでおくべきか。

復讐を果たさずして過去との決別は出来ない。
己の憎しみ、そして仲間の思いを汲んだ彼は、再び地獄のカンチャナブリへ赴く。
さあ、時代を超えて再び対峙する元兵士たちの顛末はいかに。

物語は、戦後長きに渡ってPTSDに苦しむ男の過去に迫ってゆくヒューマンドラマ。

中盤からの急展開に驚く。
初老のラブロマンスかと思いきや、戦争映画だったでござるの巻。

戦争はどれだけ多くの人々の心を傷つけたのだろう。
当時、兵士として出征した老人たちが多くを語りたがらないのも頷ける。

戦場は狂気を生む。
兵士らは加害者であり、同時に被害者でもあるのだと物語はいう。

公平な目線で綴った、知られざる歴史の1ページに触れる一作。

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」のコリン・ファース
「シンデレラ」のステラン・スカルスガルド
「アラビアの女王 愛と宿命の日々」のニコール・キッドマン
「ライフ」真田広之
「戦火の馬」のジェレミー・アーヴァイン
「ベル ある伯爵令嬢の恋」のサム・リー
石田淡朗 共演。

原題「THE RAILWAY MAN」
2013年 オーストラリア、イギリス制作。