おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

跪く女

空気はやや冷たいが、穏やかな晴天の一日。
フウセンカズラを引っこ抜き、放置したままのプランターの土にせっせとふるいをかけた。
目の細かいふるいで大粒を選り分け、最終的に料理用の細かいふるいで微塵を抜く。
全身土ぼこりだらけになりながらも、童心に帰るなかなか楽しい作業だ。

映画「跪く女」を観た。

中学校に新任の女教師がやってきた。
童顔でふわふわとまだ学生のようにあどけない彼女。
さっそく生徒たちにナメられ、担当クラスは学級崩壊。
もう泣きそう。

その時、さながらヒーローのごとく教室に現れたのが彼だった。
ベテランの先輩教師だ。
収拾がつかなくなったクラスは、彼の鶴の一声で静まり返った。

ああ、これは運命の人かも。
彼女はたちまち恋に落ちる。
以来、二人は同僚という枠を超えて親しく付き合うようになり、ついにはゴールインとあいなった。
なんとも微笑ましい教師カップルの誕生である。

ところがアツアツの新婚生活が始まって間もなく、彼女はこの運命の人に違和感を覚えた。
夫は二人だけの時間を大切にしたいと言い、彼女の親や交友関係を極端に嫌うのだ。
妻を支配し意のままにすることを愛と勘違いしているのか。

しかもミーイズムで他人の気持ちなどお構いなし。
自分さえよければいい、そんな思いやりのない人間だった。
・・・もっと早く気づけよ。

さて、職場の学級崩壊はあいかわらずで悩みは尽きない。
しかし夫は彼女の至らなさを責めるばかりで、共に悩みを分かちあおうという姿勢はない。
そこにあるのは、ダメな生徒を上から見下す嫌な教師の眼差しだった。

こんなはずじゃなかった。

普通ならここで別れを切り出すだろう。
ところがそうはならなかった。

自分に自信がない彼女は、認めてもらいたい欲求が人一倍強かった。
そのため、支配者である夫の意思に逆らうことができない。
こうして交友関係を断たれ孤立した彼女は、夫と二人だけの世界で精神的に追い詰められてゆくのだった。

物語は、外部からは窺い知れない家庭内に潜むDVをテーマに、歪んだ夫婦関係によって壊れゆく女の姿を生々しい性描写と共に描いたヒューマンドラマ。

三つ子の魂百までというが、幼少時に受けた心の傷が後の人生に暗い影を落とす様を目の当たりにする。
夫の独占欲、そして妻の認証欲求は、おそらくそれぞれの親の虐待に起因するのではないかと思う。
こういった二人が出会ってしまうと、互いに引きずられ共依存に陥ってしまうのだろうか。
運命の人を引いたつもりが、最悪の貧乏くじを引いてしまったでござるの巻。

ヒロインの同僚役レベッカ・ファーガソンはやっぱりイングリッド・バーグマンによう似てる。

グスタフ・スカルスガルド
「ピュア 純潔」のアンナ・オーストレム
「ライフ」レベッカ・ファーガソン
ケビン・バズ
ステン・ユングレン共演。

原題「VI」
2013年 スウェーデン制作。