おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

ジュリエッタ

雲間から青空が顔を覗かせる。
気温上がらず、吹く風はあいかわらず冷ややか。
街のあちらこちらに大阪府知事選、市長選に向けたポスター用の看板が設置されていた。

映画「ジュリエッタ」を観た。

赤いドレスの布が風を孕んで呼吸するように動く。
そのカタチはさながら女性器のよう。
そんなオープニングロールから物語は幕を開ける。

ここはマドリードの街。
モダンなアパートの一室で、ウキウキと荷造りに励む赤いドレスの中年女性がいる。
芸術の仕事に携わる恋人に付き添い、これからポルトガルに旅立つのだという。

最後の買出しのため通りに出た彼女は、懐かしい知人と再会した。
娘の親友だった女性である。

その親友いわく、つい先頃、たまたま仕事で出かけたコモ湖で娘に会ったというのだ。
子供を連れており、ノーメイクでどこか痩せているように見えたという。

それを聞いた彼女の顔色がさっと曇った。
さっきまでの旅行気分はどこかへ吹っ飛んでしまったようだ。
なぜなら、娘とは12年も音信不通だったから。

生活に困窮しているのだろうか。
もしかして娘は帰ってくるかもしれない。
今、マドリードを離れるわけにはいかない。
彼女は恋人に旅行のキャンセルを告げると、娘とかつて暮らした古いアパートを訪れた。
孫を連れた娘が今にも向こうからふらりと歩いてきそうな、懐かしい通りの風景だ。
そこで空き部屋を借り受けると、白いノートに向かって一心不乱にペンを走らせるのだった。

それは彼女が娘に伝えたかったこと。
娘の父親との出会いに遡る、彼女が歩んできた嘘偽りのない半生だった。

さて、今となっては遠い昔。
25歳のうら若き彼女が夜行列車で一人旅をしていた時のことじゃった。
ボックス席の向かいに、ふらりとオッサンが腰を下ろした。
同じく一人旅で話し相手を求めているという。

・・・えええ?このだいぶ年の離れたオッサンが娘の父親!?

オッサンのどこか陰気な佇まいに嫌気が差した彼女は、そそくさと席を立ち食堂車へ向かう。

そこで出会ったのがイケメンの漁師。
娘の父親となる男であった。

・・・へー、やっぱりね。

彼女と娘との間にいったい何があったのだろう。
物語は、ある女性の半生を見つめ、女性が持つ特有の感性や葛藤に迫ったヒューマンドラマ。

愛する家族だからこそ受け入れがたい感情もままある。
娘との関係を拗らせてしまった女性の告白に耳を傾ける一作。

窓に切り取られた海辺の風景が絵画のように美しい。
この見事な映像に惹き込まれる。
ただ、ミステリアスな期待を持たせつつ展開してゆくストーリーは、安っぽいメロドラマの域を出ておらず、観る者の感情に訴えかけるものではなかった。
一歩も二歩も引いて観るに留まる。
残念。

エマ・スアレス
「人生スイッチ」のダリオ・グランディネッティ
ミシェル・ジェネール
アドリアーナ・ウガルテ
ダニエル・グラオ
ロッシ・デ・パルマ
インマ・クエス
ホアキン・ノタリオ
スシ・サンチェス
マリアム・バチル共演。

原題「JULIETA」
2016年 スペイン制作。
PG-12