おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

はじまりのうた

どんより曇り空の一日。
昨日に引き続き空気は冷たい。
大阪府知事選、市長選に加えて市議会と府議会選挙に向けたポスター用看板が拡張されていた。
でかい白看板だ。
政敵憎しという気持ちは分かるけれど、今回の選挙において両陣営ともフェイクニュースの拡散だけは避けて欲しいと思う。
所詮は目クソ鼻クソの戦いなのかと、有権者は萎えてしまうよ。
まあ、とんでもないクソを避けて、ちょいとマシなクソに投票するのが選挙ですけれど。

映画「はじまりのうた」を観た。

ここニューヨークに、酒びたりでヒゲもじゃのオッサンがいる。
彼はその昔、友人と独自レーベルを立ち上げたレコード会社の創立者にして、90年代初頭のヒップホップシーンを牽引してきた名プロデューサーだという。

ところが、ここにきて才能が枯れてしまったのだろうか。
長いこと眼鏡に適うような才能の発掘には至っていない。
しかも、女房や娘とは一年前から別居中。
酒に溺れる彼は、とうとう共同経営者からクビを言い渡されてしまった。

ああ、何もかもが上手くいかない。
こういう時に限って車は故障。
列車は遅延だという。
時間を持て余した彼は、酒を求めてふらりとバーに立ち入った。

バーのステージではライブが行われている。
その時、気乗りのしない様子の女性が誘われて渋々ステージに上がった。

ギター片手に彼女は歌い始める。
「都会で独りぼっちのあなたへ」と題された素朴な歌だ。
それは、たちまち彼の心に沁み入った。
頭の中では様々な楽器が音を奏ではじめ、無限にアレンジが膨らんでゆく。

これや!
これやで!

観客の反応はいまひとつであったが、彼には確信があった。
それはまさに宝石の原石だった。

なあ、レコード出さんか?
さっそくオッサンは、プロフィールを提示しつつ彼女に提案。
しかしどうも食いつきが悪い。
オッサンの見た目がよれよれだからか?
いやいや、それだけではなかった。

恋人に引っ付いてこのニューヨークにやってきたという英国人シンガーソングライターの彼女。
互いに音楽的刺激をし合える素敵なカップルであったが、恋人がメジャーデビューを果たしたことで、いつしか二人の間にずれが生じてゆく。
恋人の裏切りに失意の彼女は、ニューヨークを引き上げ明日にでも故郷に帰るつもりであった。

オッサンは航空機のキャンセル料を払うと彼女を引き止めはしたものの、レコードデビューに関してかつての共同経営者からは協力を得られそうにない。
カネはないし、さて、どうしたものか。

その時、オッサンは閃いた。
曲ごとに場所を変え、このニューヨークの街を舞台にした手作りのアルバムを作るんだ!

オッサンの音楽プロデューサーとしての勘は鈍ってはいなかった。
むしろ今の時代に合った、新しいものへと進化しているではないか。
売れる売れないは二の次。
楽家として純粋にわくわくする企画に、彼女は惹かれ俄然やる気になるのだった。

物語は、音楽プロデューサーと女シンガーソングライター。
失意のどん底にあった二人が奇跡のような出会いを経て再起をかける姿を追って行く音楽ヒューマンドラマ。

登場人物らの心境を音楽に乗せて歌い上げた、聴かせる一作。

よくありがちなストーリーで特段目新しさは感じられない。
前半はどちらかといえば退屈だ。
ただ、彼らの音楽アルバムと同じく、アレンジ次第でありふれたストーリーがぐっと輝きを増す。
アレンジの魔法がかかってくる中盤あたりからが見どころ。

キッズ・オールライト」のマーク・ラファロ
銀河ヒッチハイク・ガイド」のモス・デフ
トゥルー・グリット」のヘイリー・スタインフェルド
「25年目の弦楽四重奏」のキャサリン・キーナー
「つぐない」のキーラ・ナイトレイ
アダム・レヴィーン
「イントゥ・ザ・ウッズ」のジェームズ・コーデン
シーロー・グリーン共演。

原題「BEGIN AGAIN」
2013年 制作。