おかめさんのキネマ手帖

映画の予備知識は限りなくゼロに近いのが理想や。 そう思うてるライトユーザーなオバハンがつぶやく ぼちぼちな映画日記やで。

欲望の帝国 女優ディディの告白

さんさんと日差しが降り注ぐ晴天の一日。
桜の開花が近いとのことだが、吹く風はまだちょっと冷たい。
かなり強引な植え替えを行ったシャーレーポピーは落ち着いたようで、プランターの中でわしゃわしゃと葉を茂らせている。
花が咲き、またミツバチが来てくれたらいいんだけれど。

映画「欲望の帝国 女優ディディの告白」を観た。

ここはスペイン アカデミー賞の授賞式会場。
大勢の報道陣が待ち受ける中、車から降りた大物スターカップルがにこやかにレッドカーペットを歩んでゆく。

満場の拍手の音で勝利の実感が胸にこみ上げてきた。
それは人生で一番辛い日だったけれど。

彼女にいったい何があったのだろう。
見事オスカーをものにした女優のつぶやきから物語は幕を開ける。

時はかれこれ5年前に遡る。
マドリードにある場末のクラブでバーテンダーとして働く彼女。
酒とドラッグに染まってゆく女友達を前に彼女は危機感を覚えた。
このままここにいたらダメになる。
一緒にここを出ようよ。
あたし、夢だった女優を真剣に目指そうと思うんだ。

しかし、女友達は首を縦には振らなかった。

そこで彼女はひとり、ラテン系のコネが効く街だというアメリカのマイアミに飛ぶ。
期待を胸にモデル事務所のオーディションを受けまくるものの結果は芳しくない。
頼れる人もいなく、資金も体力も底をつきかけたところで、思いがけない出会いに恵まれた。

ロサンゼルスで映画監督助手をやっているという気のいいメキシコ男だ。
彼いわく、ハリウッドは人肉市場だという。
アメリカに残るためなら何でもするラテン系女優は業界人のいい餌食だというではないか。

しかし、彼女にはその忠告の意味がまだ何も分かってはいなかった。

こうしてメキシコ男と共にロサンゼルスにやってきた彼女。
彼の人脈でチャンスを得て、仕事はとんとん拍子かに思われた。

・・・上手く行き過ぎじゃね?
コネも実績もないぽっと出の女が、いきなり女優になれるものだろうか。

そうなのだ。
何事にも裏がある。
この業界、エージェントはポン引きさながらであった。
彼女は役作りのため、あるいはCMに抜擢されるため、エージェントが引っ張ってくる有力スポンサーを相手に売春婦さながらの試練を余儀なくされるのだった。

物語は、輝かしい映画女優に転身してゆく女性の足取りを追い、いかにして映画女優がカタチづくられてゆくのか、そのえげつない業界の裏側を見つめるヒューマンドラマ。

仕事を重ねるごとに垢抜け、堂々たる貫禄を身につけてゆくヒロインの変貌が見どころ。

千載一遇のチャンスは本人の運や実力だけでは得られない。
自尊心と引き換えに作り出されるものだと物語はいう。
なんとなくそんな気がしてた、業界の裏側を知る一作。

どんな屈辱にも耐え抜き、がむしゃらに成功の階段を駆け登ってきた彼女たち。
しかし、誰もが憧れる存在になるために失った代償はあまりに大きかった。

女優はしたたかで、男勝りの気の強さだといわれる所以が分かる。
鋼の精神でないと務まらないのだ。
それと分かっていて飛び込むのならいざ知らず、若い娘が憧れだけで飛び込むと痛い目に遭いそう。

モニカ・ベルッチの恋愛マニュアル」のエルサ・パタキー
フローラ・マルティネス
ジャン・マリー・ホアン
「ボーダー・ラン」のジョヴァンナ・ザカリアス
ルイス・アチャ
「ノースフォーク 天使がくれた奇跡」のピーター・コヨーテ
ポール・シュルフォー
ベン・テンプル共演。

原題「DI DI HOLLYWOOD」
2010年 スペイン制作。
R-15